婚姻届にはいろいろな記入欄があり、「どうやって書けばいいの?」と迷いながら書き進める人も多いようです。
特に頭を悩ませがちなのが、「同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯のおもな仕事」と書かれた職業欄。パッと見ただけでは理解しづらい選択肢がいくつも並んでいて、どれを選べばいいのかよくわかりません。
ここでは、職業欄の詳しい内容や、自分の職業がどの分類に当てはまるのか、という疑問の解決方法について、丁寧に解説します。
■婚姻届の職業欄にはふたつの項目がある
婚姻届の職業欄には、ふたつの項目があります。「(7)同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯の仕事」と「(8)夫妻の職業」です。
「(8)夫妻の職業」は、国勢調査のある年度に婚姻届を提出する人が記入する欄です。該当しない場合は、空欄のままで問題ありません。国勢調査は、5年に一度行われています。
なお、婚姻届に職業を記入する欄が設けられている理由は、出生、死亡、婚姻、離婚と職業や産業との関連を調べるための「人口動態調査」などの統計に利用するため。「この職業を選んだせいで婚姻届が受理されなかった」ということはありませんので、記入ルールを守り正直に記入しましょう。
■「同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯のおもな仕事」の書き方
まずは「(7)同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯の仕事」の書き方から見ていきます。わかりにくい言い回しになっていますが、「同居を始める前の夫妻」というのは、「同居をはじめる前のそれぞれの状況」という意味です。ひとり暮らしなのか、実家暮らしなのか、または同棲を始めて何年も経つ人は、同棲する前の状況となります。
「世帯」とは、一緒に暮らしている人たちのこと。つまり「それぞれの世帯のおもな仕事」というのは、その世帯でいちばん収入が多かった人の仕事、という意味です。
ひとり暮らしなら本人、実家暮らしなら父や母の仕事となります。
では、ケースごとに見ていきましょう。
・ふたりで同居する前に、ひとり暮らしをしていた場合
実家を出てひとり暮らし期間があり、恋人ができて同居を始めた場合は、これに該当します。ひとり暮らしは言葉のとおり、自分以外の同居人がいないため、「世帯のおもな仕事」=「自分の仕事」です。自分の仕事について、当てはまるものにチェックをしましょう。
・ふたりで同居する前に、家族と暮していた場合
恋人と同居することになり実家を出た場合は、これに該当します。同居する前の世帯は実家になるため、多くの場合は「世帯のおもな仕事」=「親の仕事」になります。いちばん多くお金を稼いでいたのが父親だったら、父親の仕事について当てはまるものにチェックをしましょう。
・まだ同居していない場合
ふたりがまだ同居していない場合は、現在の状況を答えます。ひとり暮らしの場合は、自分の仕事に当てはまるものを選びます。実家暮らしの場合は、父親や母親など、家族のなかでいちばん多くお金を稼いでいた人の仕事について、当てはまるものにチェックをします。
■「同居を始める前の夫妻のそれぞれの世帯のおもな仕事」の選び方
ここまで理解できたら、次は職業を選んでみましょう。各項目の意味は、次の通りです。
・1 農業だけまたは農業とその他の仕事を持っている世帯
実家が農家という人や、自分で農業を営んでいる人を指します。農業をやりながら会社員として企業に属している人も、主な収入が農業であれば、ここにチェックを入れます。
例:農家、酪農家など
・2 自由業・商工業・サービス業等を個人で経営している世帯
個人事業で生計を立てている人を指します。フリーランスで仕事をしている人や、飲食店を経営している人はもちろん、林業や漁業関係者、弁護士や医者などもここに含まれます。
例:漁師、開業医、デザイナー、カメラマンなど
・3 企業・個人商店等(官公庁は除く)の常用勤労者世帯で勤め先の従業者数が1人から99人までの世帯(日々または1年未満の契約の雇用者は5)
従業員数が1〜99人の一般的な企業に勤めている、いわゆるサラリーマンを指します。「1年未満の契約で雇われている人」や「公務員」は含まれませんので、注意が必要です。
例:中小企業で働く会社員など
・4 3にあてはまらない常用勤労者世帯及び会社団体の役員の世帯(日々または1年未満の契約の雇用者は5)
基本的には3と同じように会社員として働く人を指しますが、こちらは従業員数が100人を超える企業に勤めている人を指しています。省庁に勤務する人や地方公務員もここに含まれます。
例:大企業で働く会社員、公務員など
・5 1から4にあてはまらないその他の仕事をしている者のいる世帯
アルバイトやパート、勤務期間が1年未満の契約社員として働いている人を指します。ただし、企業によってはパート社員を「常用労働者」と見なしているケースもあります。自分がどれに当てはまるのかわからない場合は、勤務先に確認しましょう。
・6 仕事をしている者のいない世帯
年金の受給のみ、あるいは仕事をしていない人を指します。専業主婦(主夫)や家事手伝い、就活中の人が、ここに含まれます。
1~6の選択肢の中から当てはまるものを選んだら、「夫」「妻」それぞれの欄に記入します。例えば、「夫」が4、「妻」が2の場合は、次のようにチェックを入れます。
■間違えやすい「夫妻の職業」の正しい書き方
続いて、「(8)夫妻の職業」の書き方を解説します。先述したとおり、この欄は国勢調査のある年度に婚姻届を提出する場合にのみ、記入する欄です。国税調査が行われるのは5年に一度。西暦で5の倍数となる年なので、直近では2025年、2030年です。
該当する年に婚姻届を提出するカップルは、次の「厚生労働省編職業分類」から自分の仕事を探し、職業欄に番号か職業分類名を記入します。
01 管理職
例:議会議員、会社役員、会社管理職員など
02 専門・技術職
例:医師、薬剤師、保育士、教員、デザイナーなど
03 事務職
例:経理事務員、秘書、旅客・貨物系事務員など
04 販売職
例:小売店主、販売店員、不動産仲介人、食料品や機械メーカーの営業職など
05 サービス業
例:介護職員、歯科助手、美容師、調理人など
06 保安職
例:自衛官、警察官、消防員など
07 農林漁業職
例:農耕従事者、造園師、漁労船の船長など
08 生産工程職
例:自動車整備・修理従事者、金属プレス従事者など
09 輸送・機械運転職
例:鉄道運転従事者、バス運転者、貨物自動車運転者など
10 建設・採掘職
例:大工、とび職、土木従事者、配管従事者など
11 運搬・清掃・包装等職
例:配達員、ハウスクリーニング職、学校の用務員など
00 無職
例:報酬を伴う仕事に従事していない主婦など
どの分類に、どんな仕事が含まれるのか、詳しい内容は厚生労働省のサイトに掲載されています。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/pdf/135-6-reizihyo.pdf
厚生労働省のサイトに自分の仕事が掲載されていない場合は、「自分の仕事に近い仕事」を選んで記入します。分類がわからないときは、役所に問い合わせてみましょう。仕事内容を伝えれば、該当する番号を教えてもらえます。
なお、正社員・派遣社員・契約社員・アルバイトなどの雇用形態は関係ありません。フリーターとして仕事をしている場合は、その仕事内容をもとに記入しましょう。
■わからないことや心配なことがあるときは役所に相談を
婚姻届は正しく記入することが大切ですが、どうやって書けばいいのかわからず、困ってしまう人も多いもの。書き方で迷うことがあれば、役所の窓口に行ったり、電話をしたりして、詳しく聞いてみるのがおすすめです。
「ひと通り書けたけど心配」という人は、入籍日の前に役所へ行き、書類を確認してもらうという方法もあります。ふたりの希望する日にスムーズに入籍できるよう、婚姻届は時間に余裕をもって記入してくださいね。