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すべては花嫁の笑顔のために 裏方に徹するプロの仕事

2019.11.25 月 | CORDY(コーディ)セレクト

「やり過ぎない」が“表情美人”をつくるコツ

女性にとってヘアセットやメイクは日課とも言えますが、プロにお願いするという機会はそうそうありません。せっかくプロに頼むのならテクニックも駆使してほしいと思うものですが、パラダイスのトップスタイリストTAROさんは「ブライダルは技術やセンスを前面に打ち出す場ではない」と言います。花嫁の美しさを引き出すプロのテクニックについて、詳しく聞いてみました。

笑顔よりまつげに目が行くメイクは「too much」

ー花嫁のヘアメイクを手掛ける上で、TAROさんが最も重視しているポイントはどこですか?
TARO ブライダルのヘアメイクで最も重要なのは、いかにその人の笑顔を引き立たせるかだと思います。
 結婚式は新郎新婦にとって大切な方々をお招きする場です。家族や親戚、幼い頃にかわいがってくれた祖父母、友人、こうしたゲストが一番楽しみにしているのは花嫁の笑顔であって、どんなドレスを着ているか、どんなメイクをしているかではないと思うんです。
 だからこそ、その人の笑顔を超える「too much」なメイクは避けるべきだと思います。
たとえば、パッと見た時にまつ毛のボリュームに目が行ってしまう、笑顔よりもまつげが印象に残ってしまうようなメイクは「too much」なのです。
 中にはヘアメイクに集中し過ぎて、真顔になってしまうスタッフもいますが、するとお客様も緊張がほぐれず表情が出にくくなりがちです。その緊張した表情をベースに「もっと華やかに」「もっと優しく」とメイクを重ねてしまうわけです。ところが、お母様やご友人がブライズルームに入ってこられると、新婦様の表情がパッと明るくなって「チークが濃すぎたな」となったりすることがあります。つまり、新婦様の表情を“邪魔”している、「too much」になってしまうわけです。

最先端技術よりも表情を引き出すテクニック

そうならないように、私はまず、その人の一番素敵な表情を引き出すようにしています。経験を重ねていくと、第一印象でその人のチャームポイントが瞬時に目に飛び込んでくるようになるので、どうすれば、そこを強調できるかを考えます。どこが魅力的だと感じたのか、お客様にもお伝えすることで、より一層表情がイキイキしてくるので、その表情を引き立たせるヘアメイクを導き出すようにしていますね。
 ヘアメイクのプロとしては、最先端の技術や感性などを表現してみたいという気持ちも理解できますが、ブライダルの場合、一番目立たせなければならないのは花嫁であって、ヘアメイクの技術ではありません。
 普段からおしゃれでゲストからも「結婚式ではどんな姿を見せてくれるのだろう」と期待されているような方であれば、最先端の流行メイクをして差し上げるのも良いでしょう。でも技術や感性は、基本的にショーやコンテストで披露するものではないでしょうか。

「厚塗り」でもナチュラルメイクに見せる

ーでは、TAROさんの具体的なヘアメイクの特徴は?
TARO いかに肌を美しく見せるかを最も重視しています。そのためには、赤味やシミなど肌のトラブルを隠すメイクが欠かせませんが、そうして“作りこんだ”ことを気付かれないようにするのがプロの仕事です。そうすることで、透明感のある美しい肌が仕上がります。
 一般的にナチュラルメイクと言うと「塗らない」「描かない」といった引き算の発想になりがちです。でも、透明感のある美しい肌をつくるには、厚く塗らなければならない部分も出てきます。そこを「厚塗り」と感じさせないのがプロのテクニック、1つ1つのプロセスが普段よりもワンランク洗練されているというイメージです。そこが、プロに依頼する理由だと思います。
 肌だけではありません。たとえば、目をぱっちり見せるメイクにしても、アイラインを引いたり、まつ毛エクステを付けたりしますが、それをいかにナチュラルに見せるかがポイントです。明らかに「アイラインを引いている」などと技法が分かるようなメイクだとバレリーナや舞台俳優のように見えてしまう、それはそれで素敵ですが花嫁にはそぐわないですよね。

アクセサリーやブーケもアドバイス

ー一般的な結婚式場では、本番1ヵ月前頃、ヘアメイクリハーサルが最初にお客様と会うタイミングだと思います。パラダイスさんの場合はいかがですか?
TARO 私達は、もう少し早い段階でお会いすることが多いですね。
 一般的には本番の2、3ヵ月前、ドレスやブーケも決まった後、小物合わせのタイミングでヘアドレスのアドバイスなどから関わることが多いです。時には、まだドレスも決まっていない、本番の半年前ぐらいにお会いすることもあります。そんな時は、ドレス選びのアドバイスをすることもありますね。
 早い段階でお会いできるお客様には「好きなものだけを寄せ集めただけでは、それぞれの魅力を打ち消し合ってしまうこともある」などと、結婚式のアイテム・プロフェッショナル選びの基本からお伝えするようにしています。
 お客様は、ドレスショップで衣裳やアクセサリーを選び、フローリストさんと打ち合わせしてお花を選ぶ、美容院へ行ってインスタでピックアップした好みのヘアメイクをオーダーして「思い通りになりそう!」などと、1つ1つに対して瞬間的には満足されるかもしれませんが、結婚式当日、全部揃った時に素敵だとは限らなかったりします。
 たとえば、かわいらしい雰囲気でまとめたヘアメイクが素敵だったとしても、結婚式当日、いざ新郎新婦入場となった時、会場装飾はスタイリッシュ、BGMはドラマティックだったら、1つ1つは素敵でも全体的に見るとバラバラだと思うんです。
 トータルコーディネートは、1つ1つを足して100になるのが理想だと思います。足りなくても、超えてもいけない、トータルで見てどこを足したり引いたりするのか、そのバランスを取るのがプロの役割だと思います。

東京のナチュラルメイクはバリでは“すっぴん”?

ー実際に、お客様にどのようなヘアメイクを提案しているのか、具体例をお聞かせください。
TARO たとえば、バリと東京では、同じナチュラルメイクでも全然違ったりします。
 東京でヘアメイクリハーサルして、バリでも同じようにメイクしてみると、「すっぴん」にしか見えなかったりするんです。日差しが全く違うというのが大きな要因です。屋内で「当日と同じようなシチュエーションで」と、どんなにライトを当ててみても、現地のリアルな空気感とは全く違います。現地でその場の空気感に合わせた調整をしていくしかないわけです。
 このバリウエディングのお客様は、挙式はとことん清楚でシンプルにしたいけど、お色直しは髪を花いっぱいに飾り付けたいというご要望をお持ちでした。元々、シンプルなスタイルがお好きでしたが、せっかくの結婚式だから思いきり華やかな自分も楽しみたいというわけです。
 ただし、ヘアを埋めつくすほどの花は当日にならなければ用意できません。仮に、リハーサルでたくさんの花を用意できたとしても、当日と全く同じアレンジメントはできません。だからこそ、お客様に「自分達のことをすごく理解してもらっている、この人になら任せられる」という信頼関係を築くことが最も重要だと思っています。私たちもプロのクリエイターである以上、ある程度任せていただけないと良いものはつくれません。お客様にも当日までどうなるか分からないことを、不安に感じるのではなくワクワクしていただきたい、そのためには、信頼関係が絶対に欠かせないのです。

当日のために2、3ヵ月前のヘアカットから整える

 2つ目は、普段からおしゃれでご友人にも「結婚式ではどんな姿を見せてくれるのだろう」と期待されているお客様のケース。
 新郎様は普段からクラシカルな丸眼鏡をかけていらっしゃる個性的な方です。最初にお会いしたのは本番の2、3ヵ月前で、新郎様は結婚式当日のためのヘアカットから携わりました。九一分けのヘアスタイルは初対面からインスピレーションが湧いていましたね。クラシカルな雰囲気に合わせてハットやステッキなどの小物もご提案しました。
 小物合わせの時は、ドレスショップにもご一緒します。ヘアドレスなど頭に着けるものは、ヘアスタイルを担当する私たちが提案すべきだと考えているからです。どんなに衣裳と相性が良くても、その人の頭の形やヘアスタイルにもマッチしなければバランス良くまとめることはできません。

ゲストの顔ぶれも踏まえてスタイル提案

3つ目は、王道スタイルでとにかく上品にまとめたお客様。
 新婦様は新郎様より10歳以上年下、新郎様の親族やご友人の方には「若くてもしっかりしている」という風に見られたいという気持ちがあったので、全て上品というキーワードでまとめました。
 ヘアメイクだけで完結するのではなく、トータルで美しく見えるような提案をするには、お2人が招待しているゲストはどんな顔ぶれなのか、パーティーはどんな雰囲気になるのか、その場に立つ花嫁はどうあるべきか、結婚式を俯瞰的に考える必要があると思っています。本当に、結婚式は際限なく深堀りできる仕事だと思いますね。

ヘアメイク担当は当日の花嫁と最も近い存在

ヘアメイクを担当する私たちは、結婚式に関わるスタッフの中でも、最も、花嫁様の様子を間近で見ています。会場に到着した時の緊張感が、いつ和らいで、どんなところに感動したり楽しんだりするのか、リラックスした表情を見せるのはどんな時なのか、感情の動きを肌で感じています。
 その感情によって表情も変わります。結婚式に携わるスタッフは、お2人の一番素敵な表情が出るように声をかけたり、パーティーのオペレーションを工夫したりすることができます。私は、花嫁様の一番素敵な表情を知っているという立場から、結婚式に関わる全てのスタッフと連携して、新郎新婦の最高の表情をできるだけ長くキープし、写真や動画にも収めていただけるような仕事がしたいと思っています。

≪HAIR & MAKE-UP salon PARADISE  スタイリスト Taro≫

美容室勤務後に単身ニューヨークへ。
アッパーイーストサイドのサロンで腕を磨き、トップスタイリストに。帰国後は、フリーのアーティストとしてファッションショー、CMなどを手がけた後、「パラダイス」に参加。

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