■会場装花とは
会場装花とは、挙式会場や披露宴会場に飾る花のことを指します。ドレスや挙式会場同様に結婚式を華やかに演出してくれるアイテムのひとつで、装花の色やアレンジで、結婚式の印象を大きく左右します。
挙式会場に飾る花は、式場側で用意するのが一般的です。一般的なチャペルの場合、「バージンロードフラワー」「チェアフラワー」「祭壇装花」があります。
【挙式会場に飾る花の種類】
・バージンロードフラワー
花嫁が歩くバージンロードやゲストが座る椅子のバージンロード沿いなどに飾ります。バージンロードフラワーは花嫁が歩く場所であり、ゲストの目にも入りやすいため、新鮮で香り高い生花が使われます。
・チェアフラワー
ゲストが座る椅子に飾ります。
・祭壇装花
新郎新婦が結婚を誓う祭壇に飾ります。祭壇の中央または両脇にひとつずつ飾るのが主流です。祭壇装花は、花の香りよりも、最後列のゲストにもよく見えるようにボリュームを出すことが大切なので、生花ではなく造花を使うこともあります。
一方、新郎新婦の希望に合わせて、コーディネートできるのは、「披露宴会場の装花」になります。披露宴会場では新郎新婦が座るメインテーブルやゲストが座るテーブルの中心に飾り、それぞれ「メイン装花」または「高砂装花」、「ゲストテーブル装花」と呼ばれています。
ほかにも、ウェディングケーキやケーキ周りを装飾する「ウェディングケーキ装花」やゲストテーブルにあるキャンドルに添える「キャンドル装花」、スピーチのマイクスタンドに施す「マイク装花」など、さまざまな種類がありますので、詳しく解説していきます。
・メイン装花、高砂装花
新郎新婦が座るメインテーブルに飾ります。常にゲストの目線が集まる場所であり、いちばん撮影される場所なので、欠かせない装飾のひとつです。最近では、人の背丈ほどの樹林やグリーンのアーチなどを飾り付け、「フォトブース」としても楽しむスタイルが人気を集めています。
予算が限られている場合、メイン装花に集中的に予算を充てて、一点豪華主義で華やかな雰囲気を出すという方法を検討してもよいでしょう。
ただし、ホテルの宴会場など天井の高い会場だと、フォトブースのフレームをつくってしまうことでがらんとした雰囲気になってしまうこともあるので注意が必要です。そういった場合は、高さよりも横幅を強調することで華やかさを演出するのがおすすめです。
・ゲストテーブル装花
ゲストが座るテーブルの中心に飾ります。ゲストにとってはいちばん近く、常に目に入る装花です。おもてなしの意味も兼ねて華やかにする新郎新婦も多いですが、会話や食事の邪魔にならないよう注意しましょう。
円卓の場合、全テーブル同じデザインにするよりも、変化をつけた方が空間に立体感が生まれおしゃれな印象になります。一般的に、花で豪華に飾られたテーブルを喜んでくれるのは、男性よりも女性の方なので、予算に限りがあるなら、男性ゲスト中心のテーブルは1卓8,000円、女性ゲスト中心のテーブルは1卓1万2,000円など料金差をつけるのもおすすめです。
・ウェディングケーキ装花
ウェディングケーキ周りやウェディングケーキをのせる台を装飾します。真っ白なウェディングケーキに鮮やかな装花が映えます。ウェディングケーキを置くケーキ台にお花を飾る場合と、ウェディングケーキ本体にお花を散らす場合もあります。
また、花だけでなくフルーツやリボン、羽を飾ったり、”マジパン”という材料を使ってサッカーのフィールドや野球のボールなど趣味を表現する人もいます。会場が広い場合、ゲストが引きの写真を撮りケーキ台まで写真に収めることが多いので、ケーキ台まで装飾することをおすすめします。
・キャンドル装花
ゲストテーブルのキャンドルに添える装花です。ゲストテーブルに火をともしてまわるキャンドルサービスの演出をする新郎新婦には、火をともすために使うスティック状のトーチを装飾するキャンドル装花もおすすめです。
そのほか、花とキャンドルを組み合わせたゲストテーブルのデコレーションをするのも人気ですが、防火の観点から飾れないケースもあるので注意が必要です。
飾れる場合も、台を用意して少し高い位置に飾ったり、キャンドルホルダーを使用したり、スクエアの透明な入れ物にキャンドルを入れるなどの対策をする場合もあるようです。
・マイク装花、グラス装花、ケーキナイフ装花
マイク装花
スピーチのマイクスタンドに施す装花です。友人や上司のスピーチをより豪華な印象に演出してくれます。
グラス装花
新郎新婦の乾杯用グラスを飾ることで、披露宴序盤の盛り上がる場面である乾杯をより一層華やかにします。
ケーキナイフ装花
ケーキカット時のナイフに施す装花です。ウェディングケーキ装飾同様、白いウェディングケーキをより鮮やかに、新郎新婦の手元を華やかに彩ってくれます。
スピーチや乾杯、ケーキカットは写真を撮られやすいシーンでもあるため、お花で装飾するとパッと明るい雰囲気がプラスされ、より写真映えします。ただし、「写真映え」を口実に見積もりアップを図ろうとする式場もあるので、注意してください。
ただし、高砂装飾やウェディングケーキ装飾をすでに施してあるので、節約したい場合は無理に入れなくてもよいでしょう。
・エントランス装花、ウェルカムスペース装花、受付装花
エントランス装花
会場に入るドアやエントランス周辺を装飾します。ゲストの目にいちばん最初に入る装飾であることを意識して、華やかに装飾しましょう。
ウェルカムスペース装花
会場に到着したゲストを迎えるウェルカムスペースに飾る装花です。エントランスを綺麗に彩ることで入場前からゲストの気分を盛り上げてくれるでしょう。
受付装花
受付のテーブルにちょっとしたアクセントとして飾るのが受付装花です。飾った花を受付を担当してくれた女性ゲストへプレゼントすると素敵な演出になります。
ウェルカムボードや写真を飾ったテーブルをより華やかにするために装花を飾るという人もいます。グリーンを多めの装花にし、セピア調の写真とともに飾るとシックで大人っぽい雰囲気にしたり、麻紐と木のクリップで写真を飾るとナチュラルな雰囲気にしたりと、持参したアイテムと組み合わせて好みの雰囲気を演出するとよいでしょう。好みの花瓶を用意すると、花瓶で個性を出すこともできます。
・階段装花
階段がある会場では、階段を彩ることでお色直し入場を華やかにしてくれます。ボリュームのあるデザインにすると、一気に豪華な雰囲気になります。
・ブーケ選びとの違いは?
ブーケと会場装花は必ずしも統一しなければいけないわけではありませんが、ブーケは選んだドレスにあったものを選ぶのが基本とされており、ドレスの色との調和なども考える必要があります。
一方、会場装花は会場の雰囲気を自由にアレンジしたり、ゲストへのおもてなしを表現するためのものなので、つくりたい雰囲気やほかの装飾品に合わせて色や花材を選ぶのが一般的。会場装花の中の色をブーケに取り入れて会場全体で統一感を出すこともできます。
■会場装花にかかる費用の相場は?
会場装花の全体的な相場ですが、「ゼクシィ結婚トレンド調査2020」によると、会場装花の費用の全国平均は推計値で17万9,000円とされています。
割合をみると「10~15万円未満」が最も多く20.6%。次いで「5~10万円未満」が16.9%、「15~20万円未満」が15.1%、「20~25万円未満」が14.7%でした。
ここからは費用によって花材やボリュームがどうなるのかなど、予算ごとに目安となるプランを解説していきますので、参考にしてみてください。
【メインテーブル】
<5万円前後>
新郎新婦がぴったり収まる程度の小ぶりなメインテーブルなら、5万円程度でも寂しすぎる印象を与えることはありません。メインテーブルと会場全体のバランスを考えると、20名前後の少人数ウェディングが想定されます。
40~50名以上の結婚式でも、5万円程度に収めたい場合は、装飾小物を使ってボリュームアップしましょう。以下の写真は、予算6万円。予算のうち半分程度を花に使い、残りはイニシャルオブジェなどの小物を使ってボリュームを出しています。
<10万円前後>
30~40名規模の結婚式で使われるメインテーブルの場合、8万~10万円程度の予算があれば十分に飾りつけることができます。以下の写真は予算約12万円。装飾小物も組み合わせますが、テーブルからツル植物を出すなど生花でのアレンジも加えることができ、ふたりが表現したい世界観を演出できます。
<15万円前後>
15万円程度の予算があれば、横幅1m程度の端から端までを花で埋めることができたり、ハート型にアレンジメントしたりと、装飾の幅が広がります。装飾小物なども組み合わせれば、テーブル周り全体を飾り付けることができるので、ふたりの結婚式のテーマなども、より表現しやすくなります。
<40万円前後>
「メインテーブルをソファスタイルにしてフォトブースとしても楽しみたい」という場合、40万円前後の予算をみておきましょう。新郎新婦がお色直しで席を外している時間も、ゲストが撮影を楽しめるなど、装飾以外の用途でも活躍するので、おトクという見方もできます。
メインテーブルに40万円前後の予算を投じる場合、ゲストテーブルは1卓約5,000円程度とシンプルな装飾でも寂しい印象は避けられます。会場装花全体の予算を決めて、メインテーブルを“一点豪華主義”で飾り付けるといった予算配分もおすすめです。
【ゲストテーブル】
<1卓5000~6000円>
ゲスト4~5名の円卓なら1卓5000~6000円、両手に収まる程度の小ぶりな装花でもバランスがとれます。ゲスト7~8名の円卓でも同程度の予算に収めたい場合、テーブルクロスやトーションなどを白ではなくアクセントになるような差し色にすると華やかさを演出できます。また、テーブルに花びらを散らしたり、高さのあるキャンドルを置いたりして、縦横ともに広がりを持たせることで、装飾全体のボリュームを出すこともできます。
<1卓1万円~1万2000円>
1卓1万円~1万2000円以上の予算をかけると、花器やキャンドルなどもデザインの幅が広がります。
以下の装飾は、結婚式のテーマカラーであるショッキングピンクと黒をベースにしたデザイン。高さのある花瓶に対しキャンドルは低めの器に入れるなど、立体感のあるデザインになっており、ゲスト7~8名が座る円卓でも存在感十分です。
流しテーブルの場合は、ゲストの目線の高さに装飾を置かないことがポイント。みんなで1つのテーブルを囲んでいるという感覚を持たせるためです。そのため、高さのある装飾よりも、花びらを散らしたりツル植物をはわせたり、低めの小物を使うなど、装飾の面積を広げることで華やかさを演出します。
■会場装花のトレンドとコーディネート例
最近の結婚式のトレンドも気になるところ。続いては、最近の結婚式のトレンドに合わせた会場装花のトレンドやコーディネート例をご紹介します。
・フォトブース
数年前から「フォトブース」をつくるケースが増えています。大切なイベントである結婚式だからこそ、来てくれたゲストとの写真もたくさん残したいですよね。
上述したように、高砂の装飾をフォトブースのようにしたり、エントランスやアフターセレモニー会場にフォトブースをつくったり、場所もさまざまです。フォトブースがあれば、みんな一緒に楽しめますし、会話も自然と盛り上がるのでおすすめです。
・高砂チェア・ソファ
高砂にテーブルを置かず、椅子やソファのみを置くことで、ゲストとの距離を近くする「高砂チェア」や「高砂ソファ」の人気が上昇中。高砂のコーディネートの幅が広がることや、ドレスの全体像をゲストに見てもらえることもメリットです。
・一点豪華主義
どこか一点だけに集中してお金をかける「一点豪華主義」という考え方もあります。会場装花でいうと、披露宴の最初から最後までゲストの視線が最も集中する高砂席周りを華やかにするのがおすすめ。下の写真は、高砂席の周りを豪華に装飾したデザインです。上から藤の花を垂らすデザインがうしろからもよく見えて素敵ですね。
■装花コーディネートのポイントは?
いざ装花コーディネートを決めようと思っても、ドレスとは異なりなかなかイメージが湧きにくいという人は、まずは雑誌やInstagramなどで会場コーディネートをたくさん見ておくと、自分の好みの傾向が自然とみえてきます。好みがある程度わかっているほうがそのあとのステップも楽になるので、まずはふたりの好みを把握していきましょう。
また、選んだ式場の雰囲気やドレスの色とデザイン、床の材質や色などとのバランスを考慮することも大切です。「旅行が好きなのでどこかの国をモチーフにしたい」「キャンプが好きなので緑を多くしたい」など、ふたりの好きなものとの相性を考えながら結婚式のテーマと共に考えていくとより楽しめます。
予算があまり取れない場合はメイン装花やゲストテーブル装花など、写真に残りやすく、ゲストの目につきやすい場所にこだわるのがよいでしょう。季節に合わせた旬の花を選ぶと、ゲストにとって式を挙げた時期が記憶に残りやすくなるだけでなく、比較的値段を抑えられます。造花やリボン、バルーンなどをうまく組み合わせるのもポイント。お金をかけるところとかけないところをはっきりさせることで理想に近いものに仕上げることができるでしょう。
■フローリストの選び方と依頼方法
・フローリストは式場の提携先か、自分たちで探すか
会場や会場提携先のフローリストか、自分で探した外部のフローリストに依頼する方法があります。
ー式場の提携先ー
式場の提携先に依頼するメリットは、その式場の雰囲気や広さ、テーブルのサイズなどに合った花材やボリュームなどを熟知していること。その式場に合う定番デザインが3~5パターン用意されていて、そのなかから選んだり、定番デザインをベースにアレンジを加えたりして決める方法が一般的です。
ただし、オリジナルのデザインには対応してもらえなかったり、個性的な花材を希望すると一気に金額が跳ね上がったりすることもあります。
ー自分たちでフローリストを探すー
自分たちで探したフローリストを式場に“持ち込む”メリットは、コストを抑えられること。同じ花材、ボリュームの装花で比較すると、式場提携先の3割程度安く抑えられます。理由は提携先フローリストが式場に支払うコストがかからないため。提携先フローリストは新郎新婦の紹介料として、会場装花の総額の30~40%を式場に支払っていますが、新郎新婦から直接注文を受ける場合、その分を料金から差し引くことができるのです。
また、ホームページやインスタグラムに投稿されている過去の作品を見て、ふたり好みのデザインを得意とするフローリストを選ぶことができるのもメリットのひとつ。ただし、式場の雰囲気や広さ、テーブルサイズに関する知識はないため、式場の下見が可能かどうか、フローリストと式場の双方に確認しておきましょう。
・フローリストと密にコミュニケーションをとろう
式場の提携先か、自分たちで探すか、いずれにせよ、フローリストと密にコミュニケーションを取るようにしましょう。
会場装花の仕上がりを見ることができるのは、結婚式当日。想像していたよりもボリュームが小さく寂しいなどと、がっかりしないように気をつけましょう。なかには新郎新婦に途中経過を写真で送るなど、こまめに確認してくれるフローリストもいるので、会場装花にこだわりのある人は、そうしたリクエストをしてみるのもひとつです。
フローリストとの打ち合わせには、なにを準備すればよいのでしょう?事前に準備しておくべきものや、希望をうまく伝える方法をご紹介します。
・実際の写真や雑誌を持っていこう
たとえば「ピンク」といっても、人によってイメージする色は微妙に異なります。会場装花そのものの写真でなくとも、「ドレスを試着したときの写真」「SNSや雑誌で見つけた好きな雰囲気のイメージ図」「招待状や席札、メニュー表などのサンプルや写真」など、写真や雑誌の切り抜きなどを持参するとフローリストもイメージがつかみやすいので準備しておくとよいでしょう。
・指示書をつくってもOK
最近では希望やこだわりを「指示書」としてまとめていく新郎新婦も増えています。指示書とは、SNSや雑誌などの画像・写真をまとめたり、イラストを添えたりしたものに、ポイントを解説する文章を加えてわかりやすくまとめた資料です。よりこだわりたいと考えている人は、エクセルやパワーポイントなどで指示書をつくってみましょう。
打ち合わせの時間は限られているので、「会場装花とは?」「どんなところに飾るの?」など、最低限の知識は来店前に調べておけば、より有意義に時間を使えます。
■装花コーディネートのToDoリストとスケジュール
会場装花はフラワー関係としてブーケと一緒に決めることが多いため、ドレスや会場選び、招待状などの打ち合わせが終わったあと、結婚式の3、4ヵ前に検討し始めて挙式の1ヵ月前ごろに決定することが多いようです。
まずは4ヵ月前になったら、インスタなどで好みに合うイメージを探して、トータルコーディネートを考えておきましょう。そして、2、3ヵ月前を目安にフローリストとの打ち合わせをはじめて、1ヵ月前には装花プランを決定します。ToDoリストとスケジュールを下にまとめてありますので、これを参考にしながら計画を立ててくださいね。
■まとめ ゲストに「ケチった」と思わせないように
会場装花は当日足を運んでくださるゲストへのおもてなしの表現でもあります。「花は最低限で構わない」と、節約しすぎたことでゲストに「ケチったかな?」などとがっかりされてしまったら残念ですよね。
また、会場装花は結婚式の雰囲気を決定づけるもっとも重要なアイテムでもあるので、あとで写真で見返したときに「地味すぎた」などと後悔することもあります。ゲストにどのスペースでどんな印象を与えたいか、どんな風にふたりらしさを表現したいか、楽しみながら考えてみてはいかがでしょうか。