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キャンセル料80万円でも式場変更したワケ

2019.10.16 水 | Real Voice

“架空”の料理コースで安く見せる姿勢に不信感

山本敬太さん・彩子さんご夫妻は、2019年4月、東京・丸の内の重要文化財の中にある会員制レストラン「センチュリーコート丸の内」で幸せな結婚式を挙げました。彩子さんは当日の素晴らしさに感動し、一時は「結婚式の仕事をやってみたい」と思うほどだったと言います。でも実は、結婚式の2ヵ月前、既に契約していた式場に対し80万円ものキャンセル料を払って、急遽、式場を変更したのだそうです。なぜ、お2人はそんな決断をしなければならなかったのか、これから結婚式を挙げる“後輩カップル”へのアドバイスも含めて、詳しく話を聞きました。

打ち合わせ1回で見積りが180万円アップ?

「ここでは、どうしても私達の大切な1日を任せられない」
 山本敬太さん・彩子さんが、契約していた式場のキャンセルを決めたのは、結婚式の2ヵ月前のことでした。キャンセル料は80万円もかかってしまいました。
 式場を契約したのは結婚式の約1年前。その時点の見積りは270万円程度でしたが、ようやく3ヵ月前に打ち合わせが始まり、具体的に料理やドレス、会場に飾る花などを決めていくと、2回目の打ち合わせで一気に450万円程度まで跳ね上がってしまいました。さらに、2人の理想を叶えようとすれば500万円も超えそうな様子・・・。
 最も不信感を抱いたのは、料理の値段でした。1年前、契約した時の見積りには1万円のコース料理が入っていましたが、実はその式場のコース料理は最低でも1万1000円で、1万円というのは実在しないコースだったのです。
 担当プランナーに問いただすと「契約時の担当者が間違えてしまった」とのことですが、敬太さんはその担当者が1件でも多く契約を取りたいために、わざと見積りを安く見せようとしたのだろうと思ったそうです。
 また、彩子さんは「担当者が間違えた」と、一スタッフに全ての責任を押し付けるような姿勢にも違和感を覚えたと言います。
 「一般的な感覚だと、数百万円もの契約内容であれば、上司がチェックするものだと思うんです。それを担当者の責任と言って済ませる姿勢が、同じビジネスパーソンとして信じられない気持ちでした。また、最初の見積りは概算だったとは言え、200万円も跳ね上がってしまうのはおかしい・・・。世の中にそんな商品やサービスって他にありませんよね?そんなモラルの低い企業に、一生の大切な思い出になる結婚式を任せたくないと思いました」(彩子さん)
 打ち合わせがスタートしたのは3ヵ月前でしたが、お2人は約10ヵ月もの間、その式場で挙げることを前提にドレスを選んだりイメージを膨らませたりしてきました。式場だけでなく、お2人にとっても機会損失となったわけです。それでもペナルティが課されたのはお2人だけ、彩子さんは納得できない気持ちになりましたが、そのために時間と労力を使って争いたくはなかったのだと言います。

Amazonで1,000円のシャンパンが7,000円

2人は、式場選びの相談カウンターを訪問し、結婚式場の営業手法として最初の見積りを低めに出して契約を取ろうとすることも聞いていて、こだわりたい部分があれば、最初からある程度、高額な商品やプランを入れて見積りを組んでもらうようアドバイスを受けていました。
 アドバイス通り、式場見学の時点で「花にはこだわりたい、最初から一番高いグレードを見積りに入れてほしい」とリクエストし、出てきた見積りに対しても「これが最高のグレードなんですよね?」と念押しもしていました。だから、打ち合わせが始まってから、多少追加料金が発生するとしても、何百万円も上がるとは思っていなかったのです。ところが、先に触れたように、ありもしないコース料理が入っていたり、「こだわりたい」と伝えたはずの花も“普通”のグレードで計算されていたため、見る見るうちに跳ね上がっていきました。
 さらに、敬太さんは式場で購入する商品の価格設定も「高すぎる・・・」と思いました。たとえば、最初の見積りに入っていた乾杯用のシャンパンは1本7000円。でも、Amazonで調べたら同じ物が1000円で販売されていたそうです。
 見積りが270万円から450万円に跳ね上がったのは結婚式の2ヵ月前、ちょうど、キャンセル料が見積り総額の20%から50%に上がってしまうタイミングでした。たとえ不満があっても「そんなにキャンセル料を払いたくないし我慢しよう」と諦めさせようという狙いがあったのではないかと疑ってしまったそうです。でも、2人は「我慢しよう」とは思えず、値引き交渉はしたものの、80万円のキャンセル料を払うことになりました。

「相談カウンターで式場の営業スタイルについて聞いてはいたものの、もはや“営業スタイル”というレベルを超えている、悪意すら感じますよね。健全な企業なら“営業”はしたとしても騙そうとはしないはず、私達もそこまで疑っていなかったので、こんな風になるとは思いもしませんでした」(敬太さん)
 「機会損失という理由でキャンセル料がかかるのは分かりますが、それまでの対応を振り返ると、逆に慰謝料を払ってほしいぐらいの気持ちでした。80万円ものお金が無駄になったというだけでなく、式場に対する怒りなど、エネルギーを不必要に消耗してしまったという感覚もあります」(彩子さん)

フリープランナーと式場プランナーとの違い

 式場の契約をキャンセルした時点で、すでに招待状の一部は発送しており、ゲストにスケジュールを押さえてもらっていたので、日程は変更なしで進めることにしました。とはいえ、当日まで約2ヵ月。「結婚式の専門家」のような人にアドバイスしてもらおうと思い、ネット検索しているうちに、式場に所属していない「フリーランスプランナー」の存在を知ります。
 2人がプランニングを依頼したのは岩泉ピアンさんという男性プランナー。問合せてみると、結婚式のプランニング以外にも、式場から提示される見積りの診断や式場との交渉など、アドバイザーのような関わり方もできるなど、臨機応変に対応してくれそうという印象を受け、依頼することにしました。
 実は、2人は結婚するタイミングで妊娠が発覚し、出産後、少し落ち着いたタイミングで結婚式を挙げることにしており、生まれたての赤ちゃんの育児をしながら結婚式準備を進めていました。岩泉さんは、結婚式2ヵ月前の式場変更で急いでいることに加え、幼い子どもを抱えている事情にも配慮して、毎週のように2人の自宅まで足を運んで打ち合わせしてくれました。
 キャンセルした式場のプランナーと岩泉さんの、決定的な違いは知識と提案力。
 彩子さんは、結婚式の雰囲気は式場に飾る花次第で大きく変わると考えていたので、キャンセルした式場でも「花にはこだわりたい」と伝えていましたが、プランナーは「花の担当がいるので、そこで直接相談してください」と言うだけでした。岩泉さんの場合も、フラワーアレンジメントや空間コーディネートを実際に手掛けるのは別の人なのですが「花だけで飾り付けようとすれば、どうしても高額になりがち。花以外のアイテムも組み合わせれば金額を押さえつつ華やかさも出ますよ」などと、安心できるようなアドバイスをくれました。

フローリストも、キャンセルした式場より、新たに依頼したフローリストの方がスキルが高いと感じたそうです。新たに依頼したフローリストに、打ち合わせの事前に彩子さんのリクエストを伝えていたところ、提案書には思い描いていた通りのイメージがまとめられていて、「この人なら任せられる!」と確信できました。
 一方、キャンセルした式場の場合、ゲストテーブルのフラワーアレンジメントも、値段別でデザインが決まっていて、いくら「こだわりたい」と言っても、その中からしか選べない、「こんな色にしたい」という要望すら聞き入れてもらえたかどうか・・・と振り返ります。

スタッフからのサプライズプレゼント。結婚式準備の様子や打ち合わせの風景を撮った写真をアルバムにまとめてくれた

契約前と後で言うことが変わる

 元々、挙げる予定だった式場は太陽の光が降り注ぐ開放感のある雰囲気で、ガーデンも併設されていましたが、2人が結婚式を挙げた「センチュリーコート丸の内」は、地下の会場。憧れのイメージとは真逆とも言えるほど違いましたが、クラシカルや高級感など、また別の魅力がある、その魅力を活かそうと前向きに受け止めることができました。
 この時点で、2人にとっては「どこで挙げるか」よりも「誰に頼むか」の方が重要だと思うようになっていたのです。

 2人がキャンセルした式場に不信感を抱いたのは、見積りが一気に跳ね上がったタイミングだけではありませんでした。
 まず、ドレス選びでの出来事。式場を契約した時点で妊娠7ヵ月だった彩子さんは、体型が変わることを考え「式場で紹介されるサロンでサイズの合うドレスが見つからないかもしれない、その場合は他のサロンで選びたい」と相談していました。すると、接客の担当者が「基本的にはドレスの持ち込みは受け付けていないが、どうしても合わない場合は相談すれば持ち込みできる」と言ってくれました。
 結婚式の6ヵ月前頃、式場が紹介するドレスサロンに行ってみると、やはりサイズの合うドレスは見つかりません。担当プランナーに「持ち込みたい」と相談してみましたが、答えは「NO」。決まり文句のように「契約書にも書いてありますので」と言われ、「話が違う・・・」と感じてしまいました。
 契約したのは1年前だったのにも関わらず、打ち合わせが始まる3ヵ月前まで、何の音沙汰もなかったことも不満でしたが、打ち合わせでもがっかりさせられてしまいます。
 彩子さんは「ようやく打ち合わせが始まる!」とウキウキしながら、式場を訪問しましたが、プランナーは「受付は誰にお願いしますか?」「主賓挨拶はどうしますか?」などと、決まったテンプレートを基に、ただただ空欄を埋めていくかのような対応。自分達の大切な1日が、何らかの規格に当てはめられていくような感じがして、寂しい気持ちになったと言います。

「オリジナルウエディング」という言葉にたどり着いたのは、式場をキャンセル後、それでもなんとか結婚式を挙げようと、ネット検索していた時のことです。
 「打ち合わせが始まるまでは、どんな結婚式もオリジナルだと思っていましたが、そうではないことが分かり、だからこそ「オリジナルウエディング」という言葉があるんだなと、妙に納得しましたね」(彩子さん)
 キャンセルした式場で打ち合わせを担当したプランナーからは、とてもビジネスライクな印象を受けたそうです。見た目から判断すると、20代後半~30代前半、一定の経験を積んでいるだろうという印象もあり、ミスがあるわけでも、人柄に問題があるわけでもありません。会社が決めたルール通りに仕事をしているだけなので、お客様の要望がイレギュラーだったり、会社のルールに合っていなければ断る、その結果、結婚式が「オリジナル」ではなくなり、テンプレート化するのだと納得したそうです。

式場の雰囲気だけで決めるのは危険

「式場の雰囲気だけで契約すると失敗しやすいかもしれませんね。結婚式準備は式場探しから始めるのが一般的だと思いますが、もし「絶対にここでなければ」というほどの思い入れがなければ、どんなメンバーと作りあげていくのか、“人”の方が重要かもしれません。担当者によって仕上がりが全く違ってくるので」(敬太さん)
 「見積りの内容は、契約する前に精査すべきだと思いますが、“素人”では限界もあります。たとえば「写真は何十カットでいくら」と言われても、「何十カット」が多いのか少ないのか、その金額が高いのか安いのか、分からないからです。フリーランスプランナーの中には、セカンドオピニオン的なアドバイスをしてくれる方もいます。見積りを見て「これは高すぎる」などと診断してくれたり、式場に交渉してくれたりもするので、フィーがかかったとしても、結果的には安くなるかもしれません。
 気を付けていただきたいのは、式場のビジネスに有利になるように限られた情報しか公開しない、嘘をついてまで契約に結び付けようとするモラルの欠けた会社もあるということです。だからこそ、式場任せにせず、カスタマーの側から能動的に情報収集していく姿勢が必要だと思います」(彩子さん)
 
 そんな大変な思いをされたお2人ですが、結婚式を終えてみると「終わってしまうなんて名残惜しい」と思うほど、幸せな時間を過ごすことができたと言います。
 敬太さんが、最も充実感を得たのは、お開きの後、ゲストを見送り、結婚式をつくり上げたスタッフの方々に挨拶している時でした。スタッフの1人は、サプライズで、結婚式準備の様子や打ち合わせの風景を撮った写真をアルバムにまとめてプレゼントしてくれ、心から「このメンバーで挙げることができて、良かった」と思えたそうです。
 キャンセルした式場での経験が辛く苦い思い出であることに変わりはありませんが、お2人の結婚式は、そのイヤな思い出を吹き飛ばしてあまりあるほど幸せな時間だったと言えます。

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