■ 「結婚式貧乏にはなりたくない」。身の丈ウェディングにこだわったワケ
ゲスト数70名で約300万円、式場見学の時に最初に提示された見積りからほぼ追加料金なしというのが、矢部綾乃さんが結婚式にかけたお金です。衣裳のレンタル料金はウェディングドレス・カラードレス・タキシード2着の合計4着で約15万円。ウェディングドレス1着のレンタル料のボリュームゾーンが30~40万円(ゼクシィ 結婚トレンド調査2021調べ)と言われていることを考えると、かなりコストパフォーマンスが高いと言えます。
このお金の使い方には「結婚式貧乏にはなりたくない!」と強く肝に銘じていたふたりの思いが反映されています。
そう思うようになったきっかけは、「先輩花嫁」でもある友達の体験談。
結婚式にかけた総額は400~500万円。ご祝儀をあてても200~300万は自己負担することになったそうです。
当初、式場見学で提示された見積りが、打ち合わせを進めていくうちにどんどん料金が追加され、「こんなにかかるなら考え直したい」と思うようになった時には、ほぼ見積りの全額に近いキャンセル料がかかるために、後戻りもできない状態だったと教えてくれました。
綾乃さんは「そこまでして結婚式を挙げなくてもいいかも」とも考えたものの、入籍したばかりのタイミングで参列した友人の結婚式を目の当たりにし、「やっぱり私も挙げたい」と思いを新たにし、身の丈に合わせつつ満足できる結婚式を目指すことにしました。
そこで、自己負担額は最大200万円までと予算を決めて結婚式を挙げることにしました。最初から節約を強く意識していたために、自己負担額は100万円以下に抑えることができました。
では、綾乃さんはどのようにして結婚式のコストパフォーマンスを最大化させたのか、具体的な工夫や努力を見ていきましょう。
■ 身の丈ウェディングを叶えるための節約ポイント
-衣裳 都民共済プランを最大限に活用-
できるだけ費用を抑えるために、綾乃さんが最初に訪れたのは「都民共済ブライダルプラザ」。共済に入会すると、ドレスや引出物など結婚式に必要なものを割引価格で利用できるというサービスで、綾乃さんの両親や友人も利用したという話を聞いて訪ねることにしました。
まず見学したのはドレス。都民共済のドレスサロンは想像以上に品揃えが豊富で、特にウェディングドレスは「これでいい」という妥協ではなく「これがいい」と思えるものに出合えました。
価格もかなりリーズナブル。友人の話やSNSなどから、レンタル料の相場は30万円前後だと認識していましたが、都民共済のプランはウェディングドレス・カラードレス・タキシード2着で10万円。そこからグレードアップさせる場合、追加料金がかかるシステムですが、綾乃さんは追加料金を足しても15万円前後に抑えることができました。
「SNSなどを見ていると1日レンタルするだけで50万円もするような高価なドレスも見かけましたが、私はそこまでの価値を感じられませんでした。『もっとかわいく』と追求して予算を上げれば、素敵なドレスは山ほどあるけど、私たちが結婚式でいちばん大事にしたかったことはキレイな花嫁姿を見せることではなく、大切なゲストに結婚の報告をすること。お金をかけるなら自分たちのことよりもゲストにかかわる部分にと考えました」(綾乃さん)
-式場選び 都民共済プランの利用を条件に探す-
都民共済ブライダルプラザでは、そこで提供している割安なアイテムを持ち込み料なしで利用できる式場を紹介しているため、そのなかから選ぶことにしました。
選んだのは、ふたりが初めて出会った東京ドーム近くのホテル。大の読売ジャイアンツファンというふたりは、東京ドームで野球観戦中、近くに座っていたことがきっかけで交際スタート、その後も何度も野球観戦に通った東京ドームの近くで結婚式を挙げられるのは理想的だと思いました。
そのほか、地元である千葉のゲストが乗り換えなしで参列できる立地であること、クチコミサイト「みんなのウェディング」で料理の評価が都内で1位であることなどを、総合的に判断して契約することにしました。
もちろん、予算も重要なポイントです。クチコミサイトに掲載されている、その式場で挙げた先輩カップルの費用明細のサンプルを見ていて「自己負担額は200万円まで」という予算を超えないと確信できたため、安心して契約できました。
- ペーパーアイテムなどは極力自分でつくる-
「ムダなものにお金をかけない」と考える綾乃さんにとって、特に結婚式が終わると捨てられてしまうペーパーアイテム類は極力、DIYで用意して節約できるように心掛けました。たとえば、席次表は専門店に頼むと1部あたり350~400円程度かかりますが、PowerPointを駆使してデータを用意し、紙代と印刷代を併せて1部100円程度に抑えることができました。
手作りしたのは、席次表・メニュー・ふたりのプロフィールなどをまとめた全8ページのプロフィールブック。内容もすべてオリジナルで考えたので、ふたりらしさを表現することもできたと言います。
席札のDIYはふたりの共通の趣味である、ジャイアンツのユニフォームをモチーフにしたデザイン。内側にゲストへのメッセージも書き込みました。
綾乃夫婦はコロナ禍のなかで式を2回延期しており、DIYを頑張れたのは、延期により時間的に余裕が生まれたことも大きく影響していると言います。
「2020年2月に入籍して、最初は5ヵ月後の7月に挙げる予定でしたが、そこで挙げていたらここまでDIYできなかったと思います。結果的に最初の予定から1年以上延びたので、その間にSNSなどで情報収集して『こんなのも手作りできるんだ』と知り、実際にチャレンジすることもできました。DIYは節約できるというだけでなく、自分たちらしさを表現できるというメリットも大きかったです」(綾乃さん)
式場で紹介されるアイテムやサービスのうち、結婚式当日、写真撮影してくれるカメラマンはインスタグラムで探しました。式場で注文すると撮影料とデータで約15万円、平均的な価格という感覚もありましたが、「もう少し抑えられないかな」と考えて探すことにしました。
そこで自分たちが挙げる式場で経験のあるカメラマンをインスタグラムで探したところ、提携外でも慣れているカメラマンがいることがわかりました。料金を見るとデータ込みで7万円台、交通費や持ち込み料を入れても10万円以下で注文することができました。
「探すときのポイントは、最初の見積りに入っていたプランよりも安いかどうか。相場よりも高額なのは論外、相場以下であれば納得できますが、よりおトクなものを探しだせると喜びを感じます」(綾乃さん)
- 料理 ランクや値段よりも自分の感覚に忠実に -
「お金をかけるならゲストにかかわる部分に」と考えていたため、特に料理と引出物などのギフトについては金額よりも内容を重視して選びました。料理は1人あたり1万4,000円のコース。最初の見積りに入っていた1万円のコースからワンランクアップ、スープを「パイ包みスープ」に変更するなどしました。
このホテルで最高ランクのコースは2万円以上。試食会では綾乃さんが1万3,000円のコース、旦那さんは2万円以上のコースを頼んで食べ比べましたが、綾乃さんは1万3,000円のコースで十分、むしろ2万円以上のコースよりもおいしいと感じたそうです。
「高額なコースは調理に手間暇がかかっていることは分かりましたが、肉や魚など素材そのものの味やビジュアルをストレートに楽しめるのは1万3,000円のコースで、ゲストのみなさんも私と同じように感じてくれるのではないかと思いました。どんなに高いものを選んでも、良さを理解できなければ意味がない。料理はゲスト満足のために重要な要素ですが、必要以上にかける必要はないと思います」(綾乃さん)
料理はゲストにも好評で、結婚式後に「全部おいしかったから食が進んでパンを8個もおかわりした」などと言ってくれた人もいたそうです。
- 引出物 カニやいくらなどみんなが喜ぶ北海道グルメ -
引出物は、カニやいくらなど北海道の特産品に特化したカタログギフト。定価5,000円のところ、都民共済割引で3,500円で購入できました。一般的に引出物はご祝儀の1割と言われており、ご祝儀を3万円と想定すると3,000円程度が相場なので、安く済ませようと思えば定価3,000円のギフトを都民共済割引で2,000円程度に抑える方法もありましたが、そこは節約したくないと思いました。
そう思った理由は過去の列席経験。メインの引出物、縁起物、お見送りの際に渡されたプチギフトなど、どれをとっても明らかにケチったと分かるようなギフトをもらったことがあり、列席した友人のあいだでも「あれはひどかった」と後味の悪い思いをしたからだそう。「どんなにドレスが素敵でも、ゲストに関わる部分を節約しすぎたら『なんのために招待したの』と言いたくなります。自分はそうしたくないし、そう思われたくもないという反面教師のような経験です」(綾乃さん)
プチギフトはホテル内のパティスリーで販売している1個250円のデニッシュパン。特に、旦那さんは打ち合わせのたびに4、5個は買って帰るほど大好物で、「プチギフトは絶対コレ!」と迷わず決めました。
-まとめ- 普段の消費行動と同じように比較検討してみよう
綾乃さんが嬉しかったのは、結婚式後、列席した友人に「カタログギフトでカニを頼んだよ! 料理も引出物も豪華だったから、結婚式めちゃめちゃお金かかったんじゃない?」などと言ってもらえたこと。式場から紹介されるものだけでなく「もっとコスパのいいものがあるのではないか」と探したり、DIYを駆使するなど、ゲスト満足のためにやりくりしたことが報われたと思えたそうです。
結婚式は初めての買い物でわからないことも多いので、普段のショッピングならあれこれ比較検討するのに、結婚式となると「このぐらいかかるものなんだろう」と詳しく調べる前に購入してしまう人も多いのではないでしょうか?
でも、綾乃さんは結婚式に必要なモノやサービスの価値と価格のバランスを納得いくまで追求しました。この体験談から「結婚式であっても普段のお買い物と同じように、納得できるまで比較検討する」という姿勢を参考にしてみてはいかがでしょうか。