家族婚ウェディングを選ぶ場合、おいしい食事と楽しい会話をメインにしたパーティを思い描く人が多いのではないでしょうか。新郎新婦を含め10名の結婚式を挙げた竹下さん夫妻もそうした結婚式をイメージしていました。会話が弾むだろうかという心配もありましたが、両家の仲が深まる結婚式ができたケーススタディを紹介します。
■ 家族が普段通り会話できる結婚式を
コロナの影響で両家顔合わせを見合わせていた竹下侑さん・友梨さん夫妻。結婚式は初めて対面する両家の家族に親睦を深めてもらう場でもありました。招待したゲストは両親や兄弟、ごく身近な親戚のみの8名。お互いの家族が普段通りに会話できる会にしたいと考え、「けっこう豪華なお食事会」といった雰囲気の結婚式を目指しました。
式場に選んだのは都内の外資系ラグジュアリーホテル。一流ホテルならではの洗練された空間で、ゲストにはひとり2万5,000円の豪華なフルコースを堪能してもらいました。初対面で会話が弾むかどうか不安もありましたが、目にも美しい料理や、音楽好きな父親同士がBGMを話題に盛り上がるなど、終始、和やかなムードに包まれて、会食は大成功に終わりました。
初対面の家族同士に打ち解けて楽しんでもらうために、竹下夫妻がこだわったポイントを解説していきます。
■ 初対面でも会話が弾む家族婚 3つのポイント 1.誰もが笑顔になれる超一流ホテルのおもてなし
ふたりが選んだのは都内でも有数の外資系ラグジュアリーホテル。空間だけでなく出会ったすべてのスタッフに「超一流」という印象を受け、ゲストにも心から笑顔で楽しめるような対応を期待できると確信したのが決め手でした。
でも、式場を探しはじめた時にイメージしていたのは、近場のリゾートウェディングで、ホテルウェディングではありませんでした。
ふたりが結婚を決めたのは、コロナ禍の真っ只中。結婚式を挙げるとしても大勢招待することははばかられたので、まずは親族中心の少人数ウェディングにすることを決めました。そこで思い浮かんだのが、友梨さんの出身地である神奈川・葉山で海の見えるリゾートウェディングでした。侑さんの実家も神奈川県内なので移動も少なく、感染リスクを最小限に抑えらえると考えたのです。
最初に見学したのは海の見えるゲストハウス。ガラス張りのチャペルや宴会場は解放感抜群でしたが「荒れ模様の天気」だと台無しになりかねません。また、チャペルから披露宴会場の動線も外を通らなければならず、ゲストが雨に濡れてしまうことも考えられます。
フランク過ぎるゲストハウスにミスマッチ感も
侑さんはスタッフの接客スタイルにも違和感をおぼえました。口調やトーンが少しくだけすぎている印象を受けたのです。「フランクな関係を望む人もいると思いますが、私たちの場合は頼れるベテランさんの方が安心して任せられると思いました」(侑さん)
また、見学時に提示された見積りの内容についても、根拠も示さずに「この内容で十分な結婚式が叶うと思いますよ」と語るプランナーに対して、侑さんは「その金額で済むわけがないのでは?」とかえって不安を感じたと言います。
たとえば、衣裳の金額。見積りに入っていたのは、ウェディングドレスとタキシードが1着ずつで20万円。事前にインスタグラムなどでウェディングドレスのレンタル相場をチェックしていた侑さんは、そこで借りられるドレスの品質を疑う気持ちや、最低ラインの金額を提示することで契約を促したいという式場側の思惑を感じてしまったそうです。
さらに友梨さんは、料理について明確な説明が返ってこないことにも物足りなさを感じました。
「実は学生時代にゲストハウスで配膳のアルバイトをしていたんですが、当時そのサービスレベルに疑問を持っていたんです。とくに、私を含むアルバイトスタッフは、結婚式やお客様の笑顔が好きという熱意はあるものの、料理の説明ができなかったり、お皿の下げ方がぎこちなかったりと、基本的なサービス能力が不足しているという感覚がありました。それだけに私たちのゲストにはサービス能力の高いプロフェッショナルにお願いしたいと思ったんです」(友梨さん)
一流ホテルの誠実で親しみやすいサービスに感動
そこで「一流のホテルなら一定のサービスレベルを期待できそう」と考え、プロポーズの場所でもある都内の外資系ラグジュアリーホテルの情報を見てみたら少人数ウェディングも受け付けているとのこと。見学を申し込むことにしました。
エントランスに入った瞬間から「超一流の雰囲気が漂っていた」と感じたこのホテル。とくに印象的だったのは、宴会場を見学した時のスタッフの対応でした。宴会場は使用状況の都合で見学できるかどうかわかりませんでしたが、「今なら少しご覧いただけます」と案内してもらえることに。そこでは、様々なスタッフが次の宴会の準備をしていましたが、ふたりの姿を見るなり、手を止めて挨拶をしたり、話しかけてきたそうです。その様子は礼儀正しく、親しみやすくも感じたことから、「ゲストにもこんなサービスをしてくれたら気持ちよく過ごしてもらえそう」と確信できました。
「結婚式場でアルバイトしていた頃を思い出して、『自分なら突然現れたお客様に同じような接し方ができただろうか』と考えると、改めてこのホテルで働くスタッフさんのレベルの高さを感じることができました」(友梨さん)
見学の時点で提示された見積りにも誠実な印象を受けました。衣裳の値段は新郎新婦1着ずつで44万円、さらに「もう少し上がるのが一般的です」と50万円に引き上げ、アクセサリーなどの小物代についても、衣裳とは別に5万円を見積りにプラスすることに。
「トータルでは最初に見学したゲストハウスよりも100万円程度高い金額でしたが、ゲストハウスでは衣裳の金額があまりに安く見積もられていたり、前撮りが含まれていなかったりしたので、そうした追加料金を上乗せしていけば、最終的にはさほど変わらないぐらいの金額になったかもしれません」(侑さん)
一般的に、打合せを進めるなかで、ウェディングドレスや料理、会場に飾る花などをグレードアップしたくなる人が大半。それが、最初の見積りと最終的な支払い金額にズレが生じる主な原因です。問題はそのズレの程度。竹下夫妻が最初に見学したゲストハウスの見積りは、ほぼすべてのアイテムがもっともミニマムな内容で構成されており、2軒目に見学したホテルと比べると、後々、より多くの追加料金がかかる気がしました。打合せを進めるなかで、こだわりポイントが変わることもあり、「最初から結婚式を具体的にイメージしている人は少ないので、当初から決め込みすぎるのは意味がない」といった考えの式場もあるのです。
一方で「後々100万円、200万円と上がるなら、最初から近い金額を提示してもらう方が、予算の計画を立てやすい」といった人もいます。竹下夫妻にとっては、最初から最終金額にできるだけ近い見積りを出してくれる方が信頼でき、決める際の大きなポイントになったようです。
担当してくれたウェディングプランナーとの相性も抜群。年齢や立ち居振る舞いからまるで母親のように頼れる印象があったことに加えて、イレギュラーなリクエストに対しても他部署とかけあって対応してくれる姿には一流ホテルのプロとしてのプライドも感じられました。「この人がいたから素敵な結婚式が挙げられたと思います」(侑さん)
2.コース料理をカスタマイズ 味も見た目も話題になるよう
料理は「けっこう豪華な食事会」というテーマを表現するうえでもっとも重要な要素のひとつ。このホテルでは、決まったコースはあるものの、別のコースに気に入ったメニューがある場合、ひとつ入れ替えるごとにプラス1,000円でカスタマイズすることができました。
そのため、料理を決めるための試食会では、2万2,000円のコースと1万9,800円のコースを頼んで食べ比べ、「肉料理はこっち」「魚料理はそっち」など、それぞれを「イイとこどり」することにしました。一皿ずつ、どちらが好みだったか、食後にお互いの感想を交換すると、すべて一致していたので迷うことなく選ぶことができたと言います。
ふたりがもっともおいしく感じ、ゲストにもすすめたいと思ったメニューは「スペシャルレシピで贈るダブルコンソメスープ」。アワビ茸の風味豊かな焼きリゾットに目の前でコンソメスープをかけてくれる演出や、味わい深いダシが幾層にも重なっているような豊かな風味が忘れられないそうです。
味だけでなく見た目に楽しいメニューも取り入れました。魚料理は真っ黒な竹炭のクルトンが乗っているサプライズ感のあるビジュアル。「フレンチなのに海苔が乗っているのかな?」などと不思議に映りますが、食べてみるとおいしくて見た目とのギャップが楽しい一皿です。「竹炭が竹下という苗字にもかかっている気がしてシャレがきいているので、会話のネタにもなるかなと思いました」(友梨さん)
3.BGMやプロフィールブックに会話のきっかけを散りばめる
ふたりは会話を盛り上げるために様々な工夫を取り入れましたが、ここでは効果の大きかったふたつをピックアップしてみます。
ひとつは、食事中のBGMにお祝いにまつわるクラシックを選んだこと。友梨さんの父はヴィオラの演奏が趣味で市民オーケストラにも所属しており、侑さんも食事中にクラシックを聞く家庭で育ったため、会話が弾むのではないかと思ったのです。当日は狙い通り、両家の父を中心に「この曲のタイトルなんでしたっけ?」「私は市民オーケストラでこの曲を弾いたことがありまして・・・・・・」と、大いに盛り上がることができました。
もうひとつは、「プロフィールブック」を用意したこと。プロフィールブックとは、メニュー表や席次表に、前撮りの写真やふたりの自己紹介などを加えたもので、「顔合わせのしおり」として、会話のきっかけになると考えました。
当日は、侑さんの友梨さんに対する「容姿端麗でよく喋るなぁ」という第一印象について、友梨さんの父が「よく喋るのはわかるけど、容姿端麗かなぁ?」と冗談めかして笑いを誘ったり、好きな食べ物が「サバの塩焼き」という書き込みに対して、料理上手な侑さんの母が「もう少し手の込んだもの作ってたでしょ」とツッコミを入れるなど、会話の糸口としての役割を果たしてくれました。
ひとつだけ心残りとなったのは、空間演出として「撮影用のスポットを用意しておけばよかった」ということ。「家族だけのパーティだから」と、お色直しや余興などのイベントも取り入れず、高砂ソファなども用意しませんでした。でも、みんなで写真を撮る時間はたっぷりあったので、もし高砂ソファのような撮影スポットを用意していれば、素敵な写真をたくさん撮れたり、撮影自体も楽しめたのではないかと思ったそうです。
■ まとめ 少人数婚は思い出を共有できるような仕掛けを
両親同士の会話は盛り上がるのかな、という心配をよそに、初対面同士でも打ち解けたムードで楽しむことができた竹下さん夫妻。
家族・親族は会社関係者や久しぶりに会う友人よりも、結婚を祝う気持ちやふたりへの思い入れが強いので、ふたりにまつわる話題があれば、初対面でも自然と会話が弾むものです。そのため、少人数ウェディングではふたりのエピソードやゲストとの思い出を共有できるような仕掛けがおすすめ。新郎新婦がゲストとの思い出を語りながら“他己紹介"するといった演出もぴったりです。
幼い頃の思い出や家族への気持ちなど、一般的には「内輪ネタ」と思われるものも、家族や親族にとってはもっとも興味のある話題。身内だけだからこそ、ふたりや家族の話で盛り上がれる、まさに会話中心のあたたかい結婚式を楽しんでみてはいかがでしょうか。