Instagramには、ウェルカムスペースを飾る色とりどりの手作りアイテムや大きなスプーンでファーストバイトするカップルの様子が数多く投稿されています。
結婚式の参列経験がなかった妻のさくらさんはこうした情報に触れ「やるべきこと」だと思い込んでいました。ところが夫の拓さんは「ムダなことはしなくてもよい」と言います。実際、ウェディングプランナーに尋ねてみると省けることもたくさんありました。
必要性を感じないアイテムや演出をカットするなど上手に引き算し、CORDYのサービスも上手に活用しながら自分たちが本当に「おしゃれ」だと思う結婚式を叶えたミニマリスト夫婦が、「それでも残した演出」はなんだったのでしょうか?
■ 盛り込みすぎるよりもムダをそぎ落とす方がおしゃれ
夫の拓さんは、過去に5回ほど友人の結婚式に列席したことがあったそうです。自分が結婚式を挙げることになってから、改めて列席した時のことを思い返すと「必要性を感じない」「自分の感性には合わない」と思うアイテムや演出もたくさんありました。あれこれ盛り込み過ぎるよりも、ムダをそぎ落とす方がおしゃれだと考える拓さんの価値観には合わなかったのです。
「たとえばウェルカムスペース。参列した結婚式では、ウェルカムボードや手作りのデコレーションアイテムなどで華やかに飾られていましたが、じっくり見たことはなく、正直印象に残っていません。ゲストが待っているあいだ、楽しんでもらえるようにという意図があるのかなと思いますが、久しぶりに会う友人や親せき同士で会話が盛り上がるので必要ないかなと感じました」(拓さん)
このほか、待ち合いスペースの飾り付け、ファーストバイト、入場時に新郎新婦にスポットライトを当てるなど、「定番」とされている演出もふたりの感性に合わないアイテムや演出は、極力、省略することにしました。
では、拓さん・さくらさん夫妻は結婚式で「なにをして、なにをしなかったのか」を、具体的に見ていきましょう。
■ ウェルカムスペースや待ち合いスペースは一切飾り付けない
このふたりはウェルカムスペースだけでなく、親族の待ち合いスペースにもウェルカムボードや写真などの装飾アイテムを、一切置きませんでした。拓さんがウェルカムスペースを飾りたくないと考えたのは、必要性を感じなかっただけでなく、見た目の面でも会場の雰囲気に水を差すという気持ちがあったから。
ふたりが選んだ結婚式の会場は東京・原宿にあるブティックホテルで、最大の決め手は建物のデザインでした。内装はコンクリートの打ち放し、インテリアなどもすべてシンプルに統一されています。
1階のラウンジはこのホテルを象徴するスペースのひとつで、利用客のなかには、Tシャツにジーンズといったラフな服装でコーヒーを飲みながら仕事をしている人も多く、まるでカフェのような雰囲気。「ホテル」といって連想するフォーマルなイメージとは対照的です。ふたりは、そんな雰囲気を「肩の力が抜けていておしゃれ」と感じたそうです。
「このホテルの雰囲気は、余計な装飾をそぎ落とすことで完成されたもの。素人の感覚であれこれ飾ると逆効果なのではないかと思ったんです。思い出の写真や手作りアイテムを飾ることで温かい雰囲気を演出するといった考え方もあるかもしれませんが、私はこの会場を気に入ったので、その雰囲気を邪魔しない方がおしゃれだと思いました」(拓さん)
「インスタなどを見ていてウェルカムスペースはなにかしら飾るものだと思い込んでいましたが、彼に『いらない』と言われたとき、たしかになんのために飾るのかまでは考えていなかったなと気づかされました。素直に『だったらいらないか』と思えました」(さくらさん)
■ ふたりにスポットライトが当たる演出も省略
拓さん・さくらさん夫妻は、ふたりだけが注目を浴びて「主役」のような見え方になる演出を避けたいと考えました。
挙式中の結婚報告は証明書のお披露目で十分。ウェディングケーキ入刀の定番演出になっているファーストバイトも取り入れませんでした。披露宴の新郎新婦入場は、扉は最初から開けた状態にしておいて、BGMに合わせて自然な流れで入場できるようにしたり、挙式時には指輪交換の後にゲストに指輪をお披露目するシーンも省略しました。
また、披露宴中にゲストテーブルをラウンドするときは、テーブルごとにプロカメラマンがついて回ってふたりを囲んで記念撮影する演出はカットしました。ラウンドするテーブルもランダムで、新郎新婦がそれぞれにフラっと自分の友人のテーブルを訪ねて会話を楽しめるようにしました。
このふたりにとって、テーブルラウンドはゲストと会話を楽しむという目的が強く、写真もかしこまった様子でプロに撮ってもらうよりは、それぞれのスマホなどで気軽に撮る方がしっくりくると考えたのです。
「ふたりにスポットライトが当たるような『THE 結婚式』というスタイルは自分たちらしくないと思っていました。新郎新婦入場のスタイルやテーブルラウンドのスタイルは、プランナーさんのアイデアです。プランナーさんには打ち合わせのたびに『私たちがイメージしているカジュアルな雰囲気とズレることはやりたくない』ときちんと伝え、その気持ちを汲み取ってもらえたので、しっくりくる提案につながったのかなと思います」(拓さん)
招待したゲストは45名で、そのうち30名以上が学生時代や職場の友人。都外から足を運んでくれるなど、久しぶりに顔を合わせるゲストも多く、せっかく集まってもらうならリラックスして会話を楽しんでほしいと考えたのも、ふたりが「主役」のように見える演出をカットした理由です。
「私たちがイメージしていたのは『結婚式』というより『パーティ』の方が近いと思います。日頃、さほど接点のない職場の上司などを招待しなかったのも、ごく親しいゲスト同士、気兼ねなく過ごしてほしいと思ったからです。セレモニー的な要素を極力省いたのは、人前でスポットライトを浴びるのは恥ずかしいというふたりの性格もありますが、ゲストの顔ぶれを考えてもその方が楽しんでもらえるという気持ちもありました」(さくらさん)
■ ドレスレンタル20万円・・・・・・!? CORDYを活用してお金のムダもカット
「ムダは極力省きたい」という価値観は、お金の使い方や結婚式準備にかける手間暇にも一貫しています。
たとえばウェディングドレス。ホテルの提携先のドレスショップは、1日レンタルするのに最低でも20万円以上という料金設定で、さくらさんは「正直、理解に苦しんだ」と言います。
「自分が着たいものを選んだら、一体いくらになるんだろう? と不安になり、お色直しなんてとてもできないと思っていました。インターネットでほかの方法を探したら、CORDYのサイトで6万円でオーダーメイドできるウェディングドレスを見つけました。持ち込み料は1着3万円だったので、持ち込み料を払ってもおトクだったんです。『肩周りはこうしたい』『ウエストの位置はこの辺がいい』など、デザインのリクエストもメールで細かくやり取りできて、レンタルよりも理想のドレスに仕上がったと思います。
この価格設定なら2着でも買えるので、テイストの違う白ドレスでお色直しも叶いました。1着は両親が望んでいるかわいらしいデザイン、もう1着はソフトマーメイドのシンプルなデザインと、イメージチェンジできて大満足です」(さくらさん)
「ウェディングドレスは女性にとって特別なものだと思っていたので、レンタル料が1日20万円でも彼女が心から気に入るものなら決してムダなお金ではないと思っていました。でも、結果的に予算も抑えることができて良かったです(笑)」(拓さん)
ほかにも、おしゃれな席札などテーブルを彩る演出が魅力的に思えましたが、拓さんは気が進まない様子。拓さんには、ゲストの手元に残らないものにお金をかけるのももったいないという気持ちがありました。
「木製のブロックにゲストの名前が書いてあるナチュラルな席札がかわいい! と思ったんですが、彼に『持ち帰れると言われてもゲストは困るんじゃない?』と言われて、ハッとしました・・・・・・たしかに、その場では喜んでもらえるかもしれないけど、後々、使い道がなくて困らせてしまったり、自分の名前が書いてあるのでなんとなく捨てにくいと思わせてしまうかもしれないと思ってあきらめました」(さくらさん)
■ 親への感謝、ゲストとの思い出共有など、「それでも残したこと」
もちろん、なんでもかんでも「ムダ」だと思ったわけではありません。ふたりが意味を感じるポイントは押さえて結婚式を組み立てました。
たとえば「結婚式は親に感謝を伝える場でもある」と思っていたため、花嫁の手紙朗読は実施しました。余興は、拓さんと友人ふたりのジャズ演奏。学生時代に所属していた「ジャズ研究会」でコントラバスを担当していた経験を活かし、ピアノとサックスの友人とジャズセッションを披露することにしました。ほかにもジャズ研究会の友人が参列していたので、学生時代を懐かしんでもらえると考えたのです。
BGMもこだわったポイントのひとつ。すべてをジャズで統一しました。拓さんが好きなジャンルだというのもジャズを選んだ理由ですが、JPOPを避けたいという意図もありました。JPOPは歌詞が日本語なので意味に引っ張られたり、日頃から聞く機会の多いジャンルなので、せっかくの非日常感が薄れたりすると考えたためです。
ジャズなら意味の取れる歌詞がないことに加え、曲の強弱も激しくないため、食事や歓談のBGMとしてぴったりだと思えました。ウェディングプランナーには、原盤があれば著作権の問題などもクリアできるとアドバイスを受け、CDショップで購入した「ジャズベスト」のような1枚から相応しい曲をいくつかピックアップして流しました。
■ 定番とされていてもふたりの価値観に合わせて取捨選択しよう
結婚式が終わってから、参列した友人たちから「センスのいい式だった」という言葉を聞くことができ、拓さん・さくらさん夫妻は思い描いていたおしゃれな結婚式を叶えることができたことをより強く実感できたそうです。
成功した大きなポイントは、Instagramや友人の結婚式などでよく見かける演出やアイテムを「みんながやっているからやるものだ」と決めつけずに、ふたりの価値観に照らし合わせながら取捨選択したことでしょう。結婚式は初めてのことばかりなので、Instagramに出回っていたり、定番と言われているアイテムや演出に対して「やるべきこと」と思い込んでしまいがちですが、実際には絶対に守らなければならないルールはありません。
実はふたりが「引き算結婚式」を目指すことになったきっかけは、最初に見学した式場での体験にありました。誕生からこれまでを振り返りながら両親に感謝を伝えるムービーの演出に「泣かせたいという意図が見えすぎて・・・・・・」しらけた気分になってしまったといいます。「こういう結婚式は私たち向きではないと、ふたりで方向性の確認ができたと思います」(さくらさん)
それぞれのアイテム・演出の役割や目的などをよく調べたうえで、ふたりの価値観に合うか合わないか、きちんと検証したりウェディングプランナーに相談しながら取捨選択することで、自分たちらしい結婚式を叶えることができるのではないでしょうか。