父と娘だけで交わしたい言葉もある パーティー中に家族水入らずの時間を
新郎新婦やゲストの記憶に一生残り続けるような「いい結婚式」とはどういうものでしょうか?ウェディングドレスや会場装飾、ユニークなムービー演出や余興なども重要ですが、当日、ゲストとの間で生まれる会話や心の交流など、そこで起こる「ドラマ」こそ、結婚式の醍醐味と言って過言ではありません。この連載企画では、どんなシチュエーションで「いい結婚式」が生まれるのか、現場の第一線で活躍するプランナーが見てきたエピソードを紹介します。
第1回は新婦と父親の物語。新婦が父親の愛情をひしひしと感じた言葉は、ほんの数十秒、父娘水入らずの瞬間に飛び出しました。このパーティーを経験したプランナーは「大切な気持ちや言葉が伝わるように家族水入らずの時間も必要」と語ります。
挙式直前、 新婦の涙腺が崩壊したワケ
「パーティーのどこかで、ご家族と水入らずの時間を設けることをおススメします。大勢の方に祝福されるのも素晴らしい時間ですが、お2人の幸せを一番、喜んでいるご家族だけで過ごすプライベートタイムは、普段なら照れくさくて言えないことも素直に伝えることができ、一生忘れられない思い出になると思います」
こうアドバイスするのはウェディングプランナー歴7年のkanakoさん。ある結婚式に立ち合い「どんなに用意周到なサプライズも、“本物の言葉”に勝るものはない」と実感したのだと言います。
それは、挙式がスタートする直前、父親にエスコートされた新婦が、チャペルに集うゲストの前に現れ、大喝采の拍手に包まれたときのこと。新婦の頬には大粒の涙が光っていました。
この会場は、扉からセレモニーを行うチャペルの間に数段の階段があり、その階段を上る約20秒間は、エスコート役のゲストと新婦だけのプライベートタイムです。
その新婦は、契約前の会場見学時から、真っ赤な絨毯の敷かれたチャペルに一目ぼれ。「チャペルへと続く階段は一緒に歩く大切な方と2人だけで、これまでの人生を振り返れる空間なんです」というプランナーの説明にも目を輝かせてくれました。「誰と歩きますか?」と問いかけると、「やっぱお父さんですよね!」と即答してくれたと言います。
迎えた結婚式当日。
新婦の涙の理由は「幸せになるんだよ」という無口で不器用な父親の一言でした。
父と娘だけで、一歩ずつチャペルへと歩みを進めていたとき、この言葉を掛けられ、新婦の涙腺は崩壊してしまったのです。
親子の感動シーンはゲストの前で披露する必要ない
新婦の父親は、普段から無口で人前に出るのも苦手なタイプ。挙式直前、前室で、ワクワク、ドキドキを抑えきれず、おしゃべりが止まらない新婦とは対照的に、父親は一言も発しません。プランナーには「感情表現も不器用な方なのかな」と映りました。
そんな父親にも娘に伝えたいことはあります。喉の奥につっかえて、なかなか出てこなかった言葉も、目の前に花嫁姿の娘がいて、チャペルへの扉が開かれ「いよいよ結婚するんだな」という実感が強まったこと、2人だけの時間が生まれたこと、その2つが重なって、引き出すことができたわけです。
「家族と新郎新婦の間だけで伝わればいい言葉や気持ちがあります。親子の感動シーンを「演出」としてゲスト全員の前で披露したり、無理にサプライズを仕掛けるよりも、大切な言葉や気持ちがきちんと伝わる時間と空間を用意して差し上げる方が、プランナーとして重要な役割だと思いました」(kanakoさん)
kanakoさん
プランナー歴7年。大阪と横浜のゲストハウスに在籍し、毎月、平均7組を担当。会場見学のご案内から結婚式当日のディレクションまでお手伝いする。
おススメのGOOD WEDDINGは、お2人とゲストの距離が近く会話を楽しめたり、お料理をじっくり味わっていただけるようなパーティー。