「結婚式なんて興味ないけど、奥さんのために(仕方なく)挙げるか」という旦那さんの場合、結婚式に対して「奥さんのため」ではなく「自分のためでもある」といったマインドチェンジが不可欠です。
　
そのためにおススメなのが、式場見学に行く前に、2人が招待したいゲストをピックアップしてみること。自分にとって大切なゲストをどうやってもてなすかという視点を持ってもらえれば、結婚式を自分事と捉えるきっかけになります。
顔ぶれを思い浮かべるだけで、ゆっくり食事を楽しむスタイルがよいのか、参加型ゲームなどで盛り上がる方がよいのかなど、ぴったりのパーティスタイルも見えてきます。　
また「結婚式は幸せな自分たちを見せつけるもの」「奥さんがドレスを着てみたいだけ」といった思い込みから、前向きになれない新郎に対しても、これまでお世話になった大切な人に感謝を伝えるという新たな意義を提示することができます。

さらに時間があれば、ゲスト1人1人に伝えたい気持ち、何を感謝しているのか、思い出のエピソードなどを振り返ってみると、より結婚式を挙げる意味や価値がはっきりしてきます。
1人1人の顔を思い浮かべてみて「特に伝えたいことはない」という場合は、大勢のゲストを招待する結婚式ではなく、2人だけのフォトウェディングや家族のみの会食の方が合っているかもしれません。

これまでの列席経験からネガティブなイメージを持っている新郎の場合は、具体的にどんなシーンに抵抗があるのかをヒアリングしてみましょう。たとえば「ケーキカットは分かるけど、お互いに食べさせ合う必要ある?」「来賓のスピーチって誰も聞いてないよね」などを洗い出し、会場見学では、そうしたシーンを避けられる別の方法などを尋ねてみましょう。そこで納得できる提案をしてくれる会場を探すといった2人の共通目標を立てて見学に行くのもおススメです。

「お金がもったいない」といった理由を紐解いていくと「それだけのお金をかける価値がない」と思っているケースも少なくありません。特に、大勢のゲストを招待する結婚式の大きな目的は、今までお世話になった方に感謝を伝えることですが、その目的をはき違えたままで「価値がない」と切り捨てるのはもったいないことです。

ここからご紹介する新郎は「結婚式なんて奥さんのために挙げるもの」「本当は結婚式にかけるお金があるならマイホームに当てたい」など、一貫して“挙げたくない派”でしたが、当日は誰よりも感動して大泣きしていたそうです。
でも、結婚式準備の段階で上述したようなマインドチェンジができていれば、もっと結婚式も準備も楽しめたのではないでしょうか。

「息子は42歳になり、年齢的にも、もう結婚できないかと諦めていましたが、新婦のAさんは息子のわがままも受け入れてくれる、若いのに度量の広いお嫁さんです。こちらが「もらってくれてありがとう」とお礼を言いたいです」

挙式前に行われた親族紹介の冒頭、この新郎父の挨拶を聞いて、新郎は涙をこぼし、結婚式の間中、嬉し泣きしていました。
でもこの新郎は、当日まで頑固なまでに「結婚式なんてやる意味ない」と否定的で、この日の様子はまるで別人のようだったそうです。

なぜ、そんなに結婚式を挙げたくなかったのか、式場見学から遡って見ていきましょう。
ブライダルフェアに訪れた2人は和気あいあいと楽しそうに過ごしていました。その様子が一転したのは、模擬披露宴終了後、サロンで見積りを提示した瞬間のこと。

「こんなにお金がかかるなら結婚式なんてやりたくない」
新郎は見積りの内訳を1つ1つチェックしながら「花にこんなかかるの?」など呟いており、自分が興味を持てないものに数万、数十万円もの値段が付いていることに納得できず、怒りが増していったように見えたと、プランナーのhiromiさんは振り返ります。
新郎はこれまでの列席経験から結婚式に対して「人前にさらされて見世物のようで恥ずかしい」「何度参列しても変わり映えしない」「結婚式にかけるお金があればマイホームに回したい」といった考え方で、挙げる価値を感じられずにいましたが、新婦が挙げたがっていることに加え、友人からも「結婚式は奥さんのためにやるもんだよ」などと言われ、観念して式場見学に来た様子。でも見積りを目にした瞬間、「やっぱり意味の感じられないものにこれだけのお金をかけられない」という気持ちがよみがえってきたようでした。

口論はヒートアップしていき、ついに新婦は泣き出してしまいます。もはや式場契約の話どころではありません。

「見積りの金額を下げることはできますが、それは問題の本質ではないと思うんです。お2人はどんな結婚式が挙げたいのでしょう?60名、80名というゲストを招待する予定とのことですが、その方々に何を伝えたいのでしょうか?もし伝えたいことがないなら、大勢招待する結婚式よりも、ご家族だけの会食やフォトウェディングなどの方が当てはまるようにも思います。お2人にぴったりの結婚式でなければ、0円でも500万円でも意味がないので、少し、話し合ってみてはいかがでしょうか」
hiromiさんは、そう言って席を外し、30分～1時間程度、2人だけで話し合う時間を用意しました。

しばらくして、話し合いの結果を尋ねてみると、新婦は「これまで参列してみて、結婚式に呼ばれるということは「家族と同じように大切に思っているよ」というメッセージだということを実感してきた。結婚式は、2人のキューピッドのように支えてくれた友人達に対しても同じように感じてもらう絶好のチャンスだと思っている。花嫁衣裳は、自分が着てみたいという憧れだけでなく、これまで育ててくれた両親への感謝を伝えるためのものだと思っている」とのこと。
新郎は新婦が結婚式を挙げたい理由を「かわいいウェディングドレスを着てみたい」「友人の華やかな結婚式を見て憧れている」など、新婦自身の願望を満たすためだと誤解していたようですが、「そんな思いがあるのであれば」と納得し、その場で結婚式の契約を決めてくれました。

それでも新郎にとって、結婚式はあくまで「奥さんのため」というスタンスは変わりません。そのため、結婚式の準備を手伝わないどころか、約半年前からスタートした結婚式の打ち合わせにもほとんど同席してくれません。そうなることは、新婦も想定していたので「新郎にやってよかったと思わせるのが裏テーマです!」などと宣言していましたが、2回、3回と打ち合わせに1人で来館し続けるうちに、表情も沈んでいきました。

新婦が最も辛く感じたのは、新郎が全く興味を示してくれないこと。「こんな演出を取り入れたらゲストの皆さんに喜んでもらえそう」など、いくらプランナーと新婦の間で盛り上がっても、新郎の了解を得なければ決定できないので、自宅に戻って新郎に相談すると「いいんじゃない」と素っ気ない返事。
「張り切っているのは私だけ・・・」と寂しい気持ちを募らせていきました。

「私が彼女のサポーターになろう」と心に決めたhiromiさんは、「何回でも打ち合わせにいらしてくださいね」と伝え、約半年間で10回程度の打ち合わせに応じたほか、メールや電話でDIYにおススメのショップやサイトを紹介するなど、友達のような距離感でサポートしました。

新郎には、興味が持てそうな役割をリクエスト。音楽好きなことからBGM選びを任せたり、食へのこだわりが強いため、シェフと打ち合わせしながら料理&ドリンクのセレクトを任せるなど、少しでも楽しめそうなところを探して巻き込んでいきました。
結婚式の2ヵ月前頃には「このテーマ曲であの友達が登場したら爆笑が起こるだろうな!」など笑顔も出るようになったそうです。

先にも触れたとおり、結婚式当日は新婦よりも新郎が大泣き。涙ぐみながら「あんた、良かったね～」と手を握ってくれる祖父母、2人のために海外から駆けつけてくれた親友、「息子にこんな素敵な友達がいたのか」と喜ぶ両親、目の前に広がる光景すべてが新郎の涙の理由でした。

「自分はなんとたくさんの人に愛され、支えられてきたのだろうと実感できました。強がりな性格もあって、自分1人で生きてきたような気分になっていましたが、全くそうではなかったと思い知りました。奥さんも同じように大事にされてきて、大事に思う人がいる、だからこそ、自分には彼女を幸せにする責任があると、改めて覚悟を決めることもできました」
お開き後、新郎は涙ながらにhiromiさんに気持ちを伝えてくれたそうです。

「新郎が「結婚式、良かった」と泣く姿を見るという目標、果たせましたね」と新婦がかわいらしく微笑んだ姿も印象に残っていると言います。

結婚式を挙げた先輩カップルに「挙げてよかったですか?」と尋ねると、ほぼ100%の方が「よかった」と口を揃えます。その理由は「自分の人生に欠かせない大切な人が2人のために集まってくれたことに幸せを感じた」というものが大半です。

ウェディングドレスを着られたことやステンドグラスが美しい大聖堂で愛を誓えたことではないのです。
もちろん、そうしたきらびやかなイメージは女性の夢の象徴と言われがちで、そうした側面があるのも事実ですが、特に、大勢のゲストを招待する結婚式の本質はそこではなかったりします。

記事の中でも触れたように、結婚式の本質は招待するゲストに感謝や「これからもよろしくお願いします」といったメッセージを伝えること。逆に、その思いがなければフォトウェディングや両家両親との顔合わせなどで済ませる方がフィットしているでしょう。
旦那さんにゲストに伝えたい思いがあり、「お世話になった方々に気持ちを伝える場」という結婚式の本質に気づかせることができれば、きっと共感してもらえ、スムーズに結婚式準備が進むのではないでしょうか。

札幌のゲストハウス会場で約4年間、新規～打ち合わせ～当日施行まで一貫性で担当。その後、沖縄に移住し県内在住カップルを中心に新規～打ち合わせ～当日施行まで手掛ける。年間、約1,500組という、県内で最も取扱組数の多い会場に在籍し、インバウンドやLGBT婚など多様なお客様を担当する。