神前式を深掘り!衣裳や挙式の流れ、心構えなどを東京大神宮の神職にインタビュー
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神前式を深掘り!衣裳や挙式の流れ、心構えなどを東京大神宮の神職にインタビュー

神前式は日本の神様に誓いを立てる挙式スタイルですが、分からないことも多いですよね。CORDYでは東京大神宮の神職・唐松義行さんにインタビュー。神前式の一般的な流れや衣裳などの基礎知識に加え、神前式に臨むうえでの心構えなども紹介します。|結婚式準備をするならCORDY(コーディ)
「初穂料」の平均相場は5~15万円

「初穂料」の平均相場は5~15万円

神前式は、日本古来の神々に結婚の誓いを立てる挙式スタイル。神社や神殿が併設されたホテルで行うことが多く、神職と巫女が進行します。

神社でのお参りというと、お賽銭を納めて拝礼するのが一般的ですが、拝殿に上がって参拝する「ご祈願(ご祈祷)」もあり、結婚式もそのひとつです。「ご祈願(ご祈祷)」には、「安産祈願」「初宮詣」「七五三詣」「合格祈願」「商売繁盛」などがあります。
そのため、結婚式も基本的には「ご祈願(ご祈祷)」の作法に則って進められます。

神前式の挙式料は「初穂料」と呼ばれ、5~15万円が相場ですが、さらに高くなることもあります。

神前式を選ぶカップルは約19.2%。(ゼクシィトレンド調査2021より)以下のような理由で選ばれているようです。

・「キリスト教徒じゃない」という気持ちからチャペル挙式に抵抗がある
・白無垢や色打掛、引き振袖などの和装を着たい
・人生で最も大切な節目だからこそ日本人であることを実感したい
・厳かな雰囲気にしたい

なかには宗教上の理由で神前式を挙げられないこともあるので、あらかじめお互いの家族に確認しておきましょう。

神前式にかかる時間は約30分。
東京大神宮の禰宜(ねぎ)唐松義行さんは結婚して夫婦になることを自覚する時間にしてほしいと言います。

東京大神宮 唐松さん

東京大神宮 唐松さん

「結婚とは新しい家族の誕生です。両親の元を巣立ち、新たな家庭を築くわけですから、社会の構成員としての責任も重くなります。結婚式はそのことを深く受け止めて覚悟を決める時間でもあります。儀式のなかには、拝礼などふたり揃って行う動作がありますが、そこで息を合わせようと心掛けるだけでも、夫婦で力を合わせて生きていく覚悟ができるのではないでしょうか」

では、約30分の間にどのような儀式をとり行うのか、実際の順序に沿ってまとめてみました。

夫婦で力を合わせて生きていく覚悟を固める時間にしよう

夫婦で力を合わせて生きていく覚悟を固める時間にしよう

冒頭でも紹介したとおり、結婚式も「ご祈願(ご祈祷)」のひとつで、他のご祈願と共通する儀式もたくさんあります。でも、結婚式ならではの儀式もあり、そこが結婚式のクライマックスとも言えます。
ここでは、夫婦になることを強く実感できる儀式として、 「三献の儀(さんこんのぎ)」「誓詞奏上(せいしそうじょう)」「玉串拝礼(たまぐしはいれい)」の3つをピックアップ。 それぞれの意味や押さえておきたいポイント、儀式に臨むうえでの心構えなどを解説します。

鎌倉時代から受け継がれる武家作法

鎌倉時代から受け継がれる武家作法

三・三・九度の盃と呼ばれ、鎌倉時代から武家の婚礼作法として受け継がれている儀式です。
大中小3つの盃で新郎新婦が交互にお酒を交わしながら、夫婦の間柄になっていくという意味があります。 儀式で使うお酒は「お神酒(おみき)」といい、神前にお供えすることで神様の力が宿ると言われています。

盃(さかずき)は、大・中・小の3つのサイズがあり、小さいものから順番に使います。新郎、新婦の順で交互にお酒をいただきます。
最近は、回数を減らすなど簡略化することもあるそうです。

東京大神宮 唐松さん

東京大神宮 唐松さん

「盃の数を重ねるたびに、夫婦としてのつながりが強くなっていくといった意識で臨むことをおすすめします。盃を受け渡すときは、落とさないようゆっくりと丁寧に。お酒が苦手な人は、口を付けるだけでもよいでしょう」

次の世代へバトンをつないでいくという決意を込めて

次の世代へバトンをつないでいくという決意を込めて

新郎新婦が誓いの言葉を読み上げます。一般的には、新郎が一人で読み上げますが、新郎新婦ふたり揃って、または、新郎新婦が一文ずつ交互にというケースもあります。読み終えたら、夫婦それぞれ自分の名前を名乗ります。

東京大神宮 唐松さん

東京大神宮 唐松さん

「誓詞には、神様のはからいで出会ったふたりが次の世代へバトンをつないでいくという決意が込められています。ふたりで読み上げるなら声を揃えて、新郎一人で読み上げる場合は、新婦も文字を目で追いながら、心の中で一緒に読み上げるようにしましょう。お互いに改めて『この人と添い遂げるんだ』と実感できるのではないでしょうか」

今日の祈りが叶いますように。という願いを込めて

今日の祈りが叶いますように。という願いを込めて

玉串拝礼は、ご祈願(御祈祷)の全般において行われる儀式。「神様に敬意を表し、かつ神威を受けるために祈念をこめて捧げるもの」(『神社祭式同行事作法解説』(神社本庁編))であり、それまでの儀式の総まとめのような意味を持つ、重要なシーンです。
玉串は、榊(さかき)という植物の枝に紙垂(しで)という白い紙を結びつけたもので、地域によって榊ではなく櫟(いちい)を用いたりと、使用する植物が異なる場合もあります。

東京大神宮 唐松さん

東京大神宮 唐松さん

「玉串拝礼は、晴れて夫婦になったふたりから『今日の祈りが叶いますように。末永くお守りください』という願いを込めて行う儀式。誠意をもって臨みましょう」

結婚式の際は略式で行うことも

結婚式の際は略式で行うことも

一般的なお参りでも行う儀式。水で手と口を清めることで心身を清めます。結婚式の際は略式で行うこともあります。

一般の参拝者にも祝福の声をかけてもらえる

一般の参拝者にも祝福の声をかけてもらえる

神職や巫女に続いて、仲人がいる場合は新郎と仲人、新婦と仲人、親族の順番で列になって拝殿へ入場する儀式です。現在は仲人がいないケースが多いため、新郎新婦が並んで歩くことが多いようです。

東京大神宮 禰宜 唐松さん

東京大神宮 禰宜 唐松さん

「見た目の華やかさから、ここ10年ほどの間に広まった印象があります。一般の参拝者にも注目され、祝福の声をかけてもらえることもあるので、幸せな気持ちが一層、強まるのではないでしょうか」

神職が神様へ結婚の奉告をする

神職が神様へ結婚の奉告をする

祝詞(のりと)とは神様に対して唱える言葉。神職が結婚の奉告(報告)を行い、新郎新婦が末永く幸せに過ごせるよう、ふたりを見守ってほしいという願いを込めて祈ります。

巫女が雅楽の演奏に合わせて舞を奉納

巫女が雅楽の演奏に合わせて舞を奉納

神楽とは、神に奉納するための舞のこと。巫女が雅楽の演奏に合わせて舞を奉納します。行われないケースもあるので、興味がある人は確認しておくと良いでしょう。

夫婦の証である指輪の交換を行う

夫婦の証である指輪の交換を行う

元々は、神前式にはない儀式ですが、近年、結婚指輪が夫婦の証として一般化していることから、取り入れている神社やホテルなども多くあります。

両家がひとつの家族として結ばれる

両家がひとつの家族として結ばれる

東京大神宮 唐松さん

東京大神宮 唐松さん

「ふたりの結婚をきっかけに、家同士のつながりを深める儀式です。友人にも参列してもらう場合は、「お祝いの盃」とすれば、全員に参加してもらえます。お互いの大切な人たち全員をつなぐ儀式になるのではないでしょうか」

神前式は、神社またはホテルや専門式場の神殿で行われます。

神社は、古くから人々に崇められてきた神聖な場所。神社ならではの厳粛な雰囲気は大きな魅力です。七五三や初詣、合格祈願など、人生の節目に度々訪れる場所でもあるため、「チャペルよりもなじみ深い」と感じる人もいるでしょう。
ただし、結婚式のための建物ではないので、以下のような点をチェックしたうえで契約しましょう。

結婚式のプロデュース会社などと提携している神社は衣裳やヘアメイクもセットで注文できますが、そうでない場合は自分で探して注文する必要があります。

 社殿がさほど広くない神社などは、参列者を親族に限定している神社もありますが、なかには友人の参列を認めている神社もあります。

東京大神宮 唐松さん

東京大神宮 唐松さん

「たまに、廊下などで新郎新婦のご友人とすれ違うと『神前式って初めて見た』と嬉しそうな会話が聞こえてくることもあります。可能なら、ご友人にも参列してもらえれば、おふたりは多くの方に祝福してもらえますし、ご友人も良い経験になると思います」

「○○記念館」など神社の名前を冠した披露宴会場が併設されているケースもあります。この場合は、ゲストに移動の負担をかけることなく挙式・披露宴を行えます。併設されていなければ、披露宴会場は別に探す必要があります。

ホテルや専門式場の神殿は、挙式から披露宴までひとつの建物のなかで完結できるため、足の不自由なゲストや年配ゲストに負担をかけずに済むというメリットがあります。
神殿がなくても、チャペルのつくりがシンプルであれば、十字架などの装飾を外して神前式会場としてアレンジしてもらえるケースもあります。 「神前式を希望しているけど、神殿のない式場に惹かれている」といった場合は、契約前に式場スタッフに相談してみましょう。

左から白無垢、色打掛、引き振袖q

左から白無垢、色打掛、引き振袖

神前式では、神様への礼儀として正装で臨みます。正装とは、白無垢のほか、色打掛や引き振袖も含まれます。

「嫁ぎ先に染まる」という意味がある

「嫁ぎ先に染まる」という意味がある

最も格式の高い正礼装とされています。白には「純白」や「嫁ぎ先に染まる」などの意味が込められていることから、身も心もまっさらな状態で神様の前に立つという意識も強まります。

「嫁ぎ先の色に染まった」という意味がある

「嫁ぎ先の色に染まった」という意味がある

鮮やかで豪華な色や装飾が施されており、「嫁ぎ先の色に染まった」という意味がある色打掛は、一般的にお色直し後の衣裳として披露宴で着用されることが多い衣裳ですが、神前式でも着られます。

「他の誰にも染まらない」という意味がある

「他の誰にも染まらない」という意味がある

引き振袖は、振袖の裾丈を調節せず引きずったまま着用します。色打掛と違い、普通の着物のように帯が見えるよう着付けるのが特徴です。神前式では、黒引き振袖のみ可など色によってNGな場合もあるので、確認しておきましょう。黒引き振袖は「他の誰にも染まらない」という意味があるそう。

ヘアスタイルは綿帽子、角隠し、日本髪、洋髪の4種類が一般的です。基本的にはどのスタイルでも問題ありませんが、東京大神宮では洋髪を受け付けていないそうです。神社の方針によってルールがある場合もあるので、確認しておきましょう。

ベールのように顔を隠す役割がある

ベールのように顔を隠す役割がある

綿帽子はドレスでいうとベールのような役割があり、挙式のみ着用可能、合わせられるのも白無垢のみです。日本髪だけでなく洋髪の上につけることもできます。

白無垢、色打掛、引き振袖のすべてに合わせられる

白無垢、色打掛、引き振袖のすべてに合わせられる

角隠しは日本髪にセットした頭の周りを白い布で覆ったスタイル。白無垢、色打掛、引き振袖のすべてに合わせることができます。

文金高島田と新日本髪の2種類がある

文金高島田と新日本髪の2種類がある

日本髪は地毛結いか、かつらを選べます。スタイルは2種類で、伝統的な「文金高島田」と現代風のアレンジを取り入れやすい「新日本髪」があります。新日本髪は七五三などでも取り入れられるスタイルで、シニヨンを2、3コ並べるなど、自由にアレンジができます。

首元をすっきりと見せるアレンジが一般的

首元をすっきりと見せるアレンジが一般的

特に決まりはありませんが、まとめ髪にして首元をすっきりと見せるアレンジが一般的です。和のイメージがある簪(かんざし)だけでなく、花やアクセサリーなどを付けることができ、前髪をつくるなどアレンジに幅があるので、日本髪に抵抗があるという花嫁に人気があります。

>>花嫁和装を自分らしく着こなすための髪型は?コーディネートのポイントと事例を紹介

きちんと意味を知って臨めば意義のあるセレモニーに

きちんと意味を知って臨めば意義のあるセレモニーに

神前式の儀式は馴染みのない言葉や漢字も多く、難しく感じる人も多いかもしれませんが、きちんと意味を知って臨めば、大切な人生の節目を記念するにふさわしい、意義のあるセレモニーになるでしょう。
儀式の一つひとつに想いを込めて、丁寧に行うことで、結婚の実感や決意を強く意識でき、「彼・彼女と30年、50年と添い遂げよう」とふたりの絆もより強く結ばれるのではないでしょうか。

今回は、「東京大神宮」での例を参考に儀式の流れを紹介しましたが、神社によって儀式の名称や順番に多少の違いがあります。実際に行う場合は各神社や会場に確認してみましょう。

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