アウトドアウェディングの魅力 1日の流れをリアルパーティの写真22点で紐解く
アウトドアウェディングとは、屋外で挙げる結婚式。結婚式場のガーデンなども含まれますが、キャンプ場やビーチなど、より開放的な場所のイメージが強いのではないでしょうか?
式場以外の場所を選ぶ場合は、フリープランナーに頼むのが一般的。
ここでは、フリープランナー上野由賀里さんが手掛けたパーティの1日を紹介します。式場以外の場所で挙げるパーティの雰囲気、ゲストの心の動きなどを詳しく紹介し、プランニングを手掛けた上野さんが考える結婚式の価値にも迫ります。
1.あるナチュラルカップルのアウトドアウェディング
会場は海風を感じるリトリート施設
この記事で紹介する結婚式の舞台は、愛知県の郊外にある心地よい海風を感じるリトリート施設。ふたりやゲストの住まいから車で約1時間程度の場所です。
リトリート施設とは、ヨガや瞑想などのアクティビティを通じて、自分の内面に向き合う時間を過ごせる宿泊施設。
そこで、
丸1日をかけて、人前式・カクテルパーティ・会食・アフターパーティ
と、時間帯ごとの雰囲気に合わせてスタイルの異なるパーティを楽しみました。
新郎新婦は中学の同級生同士。休日はふたりそろって朝からサーフィンや釣りを楽しむなど、アウトドアを人生の一部と感じているようなタイプです。
日常の食卓に並ぶのは、管理栄養士の新婦がつくる旬の野菜を使った料理など、ナチュラルで環境にやさしい生活を送っています。
結婚式に集まったゲストは約70名。日頃から一緒にアウトドアを楽しむ地元の友達など親しい仲間たちが集まりました。
この結婚式はどのようにして生まれたのか、当日、ふたりとゲストはどのような時間を過ごしたのか、詳しく見ていきましょう。
2.会場探しのプロセス -「アウトドア」にも種類がある-
新郎新婦とプランナーでキャンプ場など数ヵ所をロケハン
最初、このふたりが考えていたのは、森のなかのキャンプ場などワイルドな自然を感じられる場所でした。プランナーの上野さんも数ヵ所ほどロケハンに同行してみたものの、「手つかずの自然」のような場所はふたりのキャラクターには合わないと感じたそうです。
ナチュラルなライフスタイルにぴったりの洗練されたアウトドア
そんな時、新婦が探してきたのが、このリトリート施設でした。
上野さんも新郎新婦と一緒に訪問してみると、日常生活にはないゆったりとした時間の流れを感じることができ、ふたりのキャラクターにぴったりだと感じたそうです。
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フリープランナー 上野由賀里さん
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「ガーデンでヨガを楽しんだり、朝食には庭で実った果物を出していただいたり、自分もその土地や自然の一部として馴染めるような感覚がありました。
オーナーはプライベートでは、ハワイでスローライフを楽しんでいるという話も聞き、新郎新婦のおふたりは、そのライフスタイルにも共感できるだろうと思いました」
3.本音を打ち明ける人前式 -内面に向き合う-
ゲストにふたりの気持ちを伝える時間
結婚式当日は、朝の清々しい空気のなかで人前式からスタート。
両親への手紙朗読は家族水入らずで
挙式直前には、家族水入らずで、新郎新婦それぞれが両親へ感謝を伝える手紙を読み上げる時間を設け、人前式で結婚への覚悟や集まったゲストへの感謝を伝える心の準備を整えました。
人前式のクライマックスは誓いの言葉。
「相手のどこに魅力を感じているか」
「パートナーは自分にとってどんな存在なのか」
「一緒にいるとどんな気持ちになるのか」
「ふたりでどんな人生を歩んでいきたいのか」
など、ゲストの前で新郎新婦それぞれにお互いへの気持ちを伝え合いました。
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フリープランナー 上野由賀里さん
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「とくに、新郎さまにとっては重要な時間だったと思います。
今まで内に秘めた感情や本音を人前で打ち明ける機会がほとんどなかったという新郎さま。
涙ながらに『この日を迎え、これからの人生が変わりました』と語る様子を目の当たりにし、この結婚式の成功を実感しました」
人前式はゲストと心を通わせるための準備
両親への感謝の手紙や誓いの言葉は、
文面を考えるプロセスから、当日、相手の前で読み上げる時間まで含めてすべて、自分の内面にじっくり向き合う貴重な経験。
挙式でしっかり気持ちを伝えることで、その後のパーティもよりゲストと心の通う交流ができるそうです。
4.参加者が一体となるパーティタイム -緊張をほどく仕掛け-
挙式後はドリンク片手に自由に過ごす「カクテルパーティ」
挙式後、着席のパーティに入る前に、ドリンクを片手に会話や写真撮影を楽しむ「カクテルパーティ」を行いました。
「カクテルパーティ」には、セレモニーの緊張感をほどき、その後のパーティをより打ち解けて過ごすためのワンクッションのような役割を持たせました。
接点が少ないゲスト同士を、新郎新婦が間に入ってつなぐなど、ゲスト同士のコミュニケーションがスムーズになるような交流
もできたそうです。
ふたりの愛車をキャンバスにお花のライブパフォーマンス
カクテルパーティのハイライトは、お花のライブパフォーマンス。
ふたりがアウトドアに出かける時に愛用している車をキャンバスにして、アーティストが作品をつくりあげていく「ショー」を楽しんだ後は、撮影ブースとしても活躍しました。
日の入りに合わせてパーティをスケジュール
結婚式のメインイベントとも言えるパーティは、日の入りに合わせてスケジューリング。柔らかな夕日を浴びながら、食事を楽しんだり、ゲストのスピーチに耳を傾けたりと、和やかな時間が流れました。
時間帯・ディスプレイ・料理・音楽・照明すべてが心を動かす要素
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フリープランナー 上野由賀里さん
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「パーティはゲストが一体感を感じられるような雰囲気を目指しました。カクテルパーティはそのための準備のような時間です。
ゆったりとした時間が流れるロケーションに合わせて、お料理もナチュラルなメニューを得意とするお店を探して、ケータリングをお願いしました。時間帯、ディスプレイ、音楽、照明などのすべてが、新郎新婦やゲストの感情を動かす重要な要素だと思っています」
ナチュラルなメニューを得意とするお店からケータリング
5.アフターパーティ -ゲストが思い思いに過ごす時間-
決まった席も用意せず自由に過ごす
パーティを終え、あたりが暗くなりはじめたタイミングで「アフターパーティ」へ場面転換。
アフターパーティはゲストが思い思いに過ごす時間。決まった席は用意せず、中央に用意されたキャンプファイヤーを囲みながらみんなで盛り上がるもよし、少し離れたベンチで静かに語らうもよし。
パーティよりももっと、気軽に自由に過ごせる時間
を意識しました。
スタートからお開きまでどんどんリラックスしていくパーティ
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フリープランナー 上野由賀里さん
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「結婚式がスタートしてお開きを迎えるまで、だんだんリラックスムードが高まっていくイメージでパーティプロデュースしました。
インテリアやテーブルデコレーション、席札のカリグラフィなど細部にいたるまで、見た目の美しさだけでなく、ゲストの気持ちがどう動くか、感情の動きを予測して、デザイナーと一緒に組み立てています。
その日の思い出がいかに美しく、鮮やかに記憶に残るかは、目にした光景×その時の感情という掛け算で決まると思います」
テーブルコーディネートや席札のカリグラフィまでデザイナーと組み立てる
目にした光景×その時の感情=記憶に残る思い出
6.アウトドアウェディングの醍醐味はイキイキと感情が動くこと
豊かな自然の中で素直な気持ちに
新郎新婦もゲストも開放的な気持ちで過ごすことができる「アウトドアウェディング」。
フリープランナー 上野由賀里さんのプロデュース例を見てみると、その最大の魅力はそこに集まった人々の感情がイキイキと動くことだと言えます。
豊かな自然やいつもと違うゆったりとした時間が流れるロケーションだからこそ、誰もが自然と笑顔になれたり、素直な気持ちを言葉にできるというわけです。
大切なゲストと過ごす美しい時間が人生を豊かにする
上野さんは、アウトドアウェディングに限らず、美術館やオーベルジュ(宿泊できるレストラン)など、少し足を延ばして非日常を感じられる場所で挙げる結婚式を「デスティネーションウェディング」と位置づけ、積極的に提案しています。
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フリープランナー 上野由賀里さん
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「人は、身も心もリラックスできるような場所、いつもと空気が違う場所へ行くと、自然と開放的になって会話も弾むものです。ふたりの人柄やゲストの顔ぶれに合わせて、テンションが上がる場所を探すことは、プランニングにおいて重要なポイントのひとつです。
結婚式という人生の大事な節目に、大切な人たちと絶好のロケーションの中で、同じ時空間を共有した思い出があるかどうか。それは、その後の人生の豊かさを大きく変えることだと思います」
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ウェディングプランナー
上野由賀里さん
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1996年よりウェディングプランナーとして、専門式場、大手ホテルなどで経験を積む。
ニューヨークのトップランナーから、欧米のパーティ文化、ウエディングプロデューサーのノウハウを学び500組以上のカップルに、ふたりの個性を活かす、自然体で本質的なウエディングを提案し続けている。
大手ホテル内でのオリジナルプロデュースブランドを立ち上げ、2012年にフリーランスとして独立。
日本におけるデスティネーションウェディングの第一人者。
日本のおもてなしと、世界基準のパーティプロデュースをかけ合わせた独自のスタイルで、世界各国からゲストを招いたウェディングの総合プロデュースも務める。
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フリープランナー 上野由賀里さん
「おふたりは、単純にアウトドアが好きというよりは、日々の暮らしをシンプルにそぎおとしていった結果、ナチュラルなライフスタイルに辿り着いたという印象がありました。そんなおふたりには、豊かな自然に囲まれると言っても、ワイルド過ぎず、洗練された印象を受ける場所の方がしっくりくると思っていました」