ある同性婚の実話 カミングアウト・両家顔合わせ・準備~結婚式を徹底レポート
様々な価値観を尊重する多様性の時代、同性(LGBTQ)カップルの結婚や結婚式も広く世間でも認められるようになりました。、日本では法律上の結婚が認められなかったり、表現できる場所が限定されているなど、まだまだ難しい面もあります。
次に、結婚式挙げた同性カップルはどのようなプロセスをやったでしょうか?
この記事では、フリープランナーの佐伯エリさんが考えるだ同性カップルの結婚式準備~当日を詳しくレポートします。
同性(LGBTQ)カップルは法律婚が認められない
「法律婚」とは、婚姻届を提出して法律上の夫婦になること。異性同士のカップルならほとんどの人にとって当たり前の手続きですが、日本では同性(LGBTQ)カップルには認められていません。
その代わりに、地方自治体などが導入しているのが「パートナーシップ制度」。
これは、特定の地方自治体がパートナーに対して「家族と同等であると認める」もの。
法律上の夫婦と認められないことで起こる、
・税制優遇措置や住宅ローン審査を受けられない
・病院での面会、立ち合いの権利がない
といった支障をクリアするために導入が進んでいます。
でも、法律上の婚姻とまったく同じ権利を得られるわけではありません。
パートナーシップ制度を利用しても、法律上は「他人」と見なされ、
・パートナーが亡くなったときに遺族給付金を受給できない
・パートナーが生んだ子どもであっても親権を取得できない
といった問題も生じます。
こうした日本の法律や制度について、同性カップルのなかには、生活していくうえで不便というだけでなく、ふたりの関係を世の中に認めてもらえないと感じて心苦しく思う人もいるようです。
女性カップルのHさんとKさんも、できることなら法律婚を希望していましたが、自分たちの意志ではどうにもなりません。
法律婚が難しくても、家族や友人など大切な人にはふたりの関係を認めて祝福してほしい。
ふたりの結婚式には、こうした思いも込められていました。
どこ(誰)に結婚式の相談をする?
結婚式を検討するカップルは、まず結婚式場を見学したり、相談カウンターを訪問したりするのが、一般的です。
ただ、同性カップルの場合は、宗教上の問題で受け入れてもらえない式場があったり、衣裳のラインナップをはじめ、受け入れ態勢が整っておらず、断られてしまうケースもあるので、事前のリサーチが必要です。
HさんKさんは、Hさんの仕事関係でつながりのあったフリーのウェディングプランナー佐伯エリさんに相談することにしました。
このほか、フリープランナーなら、ふたりの事情や好み、ゲストの顔ぶれなどに合わせて場所選びからコーディネートしてくれるので、同性カップルがつまずきやすいポイントも押さえてスムーズに導いてくれます。
フリープランナーの佐伯さんは、ふたりに初めて会った日、結婚式に対する温度差を感じていました。
「結婚式は長年の憧れ!ずっと挙げたいと思っていた!」というHさんに対し、Kさんは「結婚式なんて想像もつかない、考えたこともなかった」と言います。
Kさんは、緊張した表情で口数も少なかったそうです。
この時点で、ふたりはまだ両親にカミングアウトしていないとのこと。
両親や家族へのカミングアウト -Hさん&Kさんの両家顔合わせ-
それからしばらくたった、ある日の打ち合わせ、佐伯さんはふたりが初めてデートしたという公園で行うことにしました。
それぞれ、自分の両親にカミングアウトを済ませたというHさんとKさん。お花見シーズンの公園を散歩しながら、ふたりはその時の様子を語りはじめました。
「当然の未来として描いていた孫の顔は見られないと思うとさびしい」
「そういう予感はしていた」
「びっくりしたけど、少しずつ受け入れようとしている」
など、両家両親、それぞれに複雑な感情があふれたそうです。
それでも、Kさんの両親は少しずつ現実を受け入れようとしているのに対し、Hさんの父親は完全には受け入れられずにいると言います。
「両家顔合わせ食事会を開いたらどうだろう?」
ふたりのアイデアに、佐伯さんも大賛成しました。
顔合わせ食事会当日、両家の両親は対面した瞬間、4名全員、とめどなくあふれる涙を押さえることができませんでした。
同じ境遇に置かれている相手の顔を見た瞬間、それぞれに抱えていた複雑な気持ちが込み上げてきたのかもしれません。
両親の涙を見て、HさんとKさんも思わずもらい泣きしたそうです。
両家顔合わせ食事会は、終始和やかムード。ふたりが用意したプロフィールブックを見ながら会話に花を咲かせました。
親が「結婚式に来ない」と言ったら?
両家顔合わせ食事会を済ませ、両親たちもふたりの結婚を受け入れたかのように思われましたが、Hさんの父親は結婚式への出席を拒みます。
「ふたりの結婚には賛成している。でも、結婚式で心から『おめでとう』と言えないかもしれない。少しでもわだかまりのある状態で参列するのは不誠実だと感じてしまう」
ふたりが求めていたことは
「理想を言えば、法律婚。でもそれが叶わないのであれば、家族や大切な人にはふたりの関係を認めて祝福してほしい」
この目的を果たすためにも、結婚式にはHさんの父親にも立ち合ってほしいところ。
佐伯さんは、まずHさんの気持ちを確かめることにしました。
「本当はどうしてほしい?素直な気持ちを教えて」と尋ねる佐伯さんに、Hさんは「多分、何を言っても父は来ないと思う・・・。それぞれのペースで生きている家族だから」と諦めている様子。
佐伯さんは「Kさんから招待してみたら?」と巻き込んでみましたが、「私が声をかけても難しいと思う」と消極的な反応。
それでも佐伯さんは、Hさんの父親の気持ちを変えることができないか、結婚式の1週間前まであれこれ考えました。
-無理に招待するのは逆効果・・・?
パソコンに向かい、Hさんの父親への手紙を途中まで書いたところで、佐伯さんはふと、Hさんの父親の心情に想像を巡らせてみました。
もし、このまま出席しなければ、後になって後悔する可能性は高い。
でも、もし気持ちの整理ができないまま参列したら・・・?
ポジティブに考えれば、結婚式の雰囲気に押されて自然と祝福できる状態になれるかもしれない。
逆に、ふたりに冷たい態度を取るなど、裏目に出るリスクもある・・・
佐伯さんがプランナーとして大事にしているのは、相手の気持ちに憑依すること。「自分だったら」という視点を極力取り除き、カップルやゲストの目線で最適解を導くようにしているそうです。
同性カップル(LGBTQカップル)の家族婚レポート
HさんKさんは、国内リゾートでの家族婚と友人中心のお披露目パーティと2回に分けて結婚式を行いました。
家族と友人では伝えたいメッセージが異なるためです。
家族、とくに両親はふたりの将来を案じているので、安心して送り出せるように、すでにふたりの結婚を認めている友人たちには、大好きな気持ちを伝えたいと、パーティの目的を分けて考えました。
家族婚当日、Hさんの父親は現れませんでした。
直前まで、Hさんの父親が出席を決心してくれる展開を祈っていた佐伯さんは、残念な気持ちにはなりましたが、結婚式では後々、Hさん家族に良い変化を生む「種」になりそうなシーンを見つけることができたと言います。
ここでは2つの「種」を紹介します。
1.父親に「祝福すればよかった」と気づきを与える「種」
Kさん側は、両親をはじめ、兄や姉、その子どもたち、叔父も参列しました。
会場に到着すると
「今日はスピーチという大役を任せてもらえるなんて嬉しい!ありがとう」
「久しぶりにおしゃれできて心がウキウキする」
など、楽しそうな様子。
Kさんの姪にあたる子どもたちは、「ピアス(リングの代わり)ガール」も引き受けてくれました。
佐伯さんは、Hさんの父親がいつか、写真や動画でこうした様子を目にすることで、完全にふたりの結婚を受け入れられるようになり、HさんとKさんに本心から「おめでとう」と伝えるきっかけになるかもしれないと感じたそうです。
佐伯さんはあらかじめ、当日関わるスタッフに、Hさん父親が欠席予定という状況を共有していたため、気を利かせた動画担当スタッフが「残せるものは全部残しておきましょう!」と全てを記録してくれたそうです。
2.人付き合いが苦手な弟が自信を取り戻す「種」
実は、Hさんの弟は人付き合いがうまくいかず、休職していた時期があるという状態。
結婚式当日、佐伯さんには、父親が不在のなか「自分が盛り上げなくちゃ!」というHさん弟の気概が見えたと言います。
象徴的だったのは、会食中、Hさん弟が佐伯さんの方を振り返って「お料理、おいしいですね!」と楽しんでいることをアピールしてくれたこと。
人付き合いが得意ではない彼の性格を考えると、ほぼ初対面の佐伯さんに笑顔で話しかけるのは、とても勇気のいること。
「明るく振舞えた」
「家族を代表してふたりの結婚をしっかり見届けられた」
こうした積み重ねが、Hさん弟の自信につながれば、家族も幸せを感じるはずです。
結婚式を挙げてみて・・・ Hさん&Kさんの感想
ふたりは、Hさんの父親が参列できなかったことに心残りはあるものの、結婚式を挙げなければ抱くことのなかった感情や気づきがあったと言います。
まず、Kさん側のゲストが家族のみならず親戚まで大勢駆けつけてくれたことに対して。
また、Hさんは母親のスピーチを聞いて両親に対する理解不足を実感したと言います。Hさんのカミングアウトに戸惑いながらも受け入れようと努力してきたという母のスピーチは、Hさんにとっては少し意外でした。母親と結婚の話題になると、「国際結婚でも構わない」といった言葉が飛び出すこともあり、Hさんは「どんな相手でも気に留めないのだろう」と思っていたと言います。
どんな結婚式にも「家族の問題」は付き物
Hさんの父親が結婚式に出席しなかった原因は、同性婚を受け入れられなかったことのように思われがちですが、佐伯さんは深くヒアリングするなかで、実はHさんの「家族の問題」が大きいと感じたそうです。
HさんKさんは、共同名義で大きな買い物をしましたが、Hさんはこの決断を家族には事後報告したそうです。
このエピソードに象徴されるように、Hさんは決断力があるタイプ。父親はそんなHさんに「相談してくれたらいいのに・・・」と、心のどこかで少し寂しく感じることがあったかもしれないと、佐伯さんは感じました。
結婚についても、一生に一度の大事なことだからこそ、相談してほしかったという気持ちがあったのではないかと言います。
このような家族間のすれ違いは、異性同士の一般的なカップルでも、よくあることだそうです。
たとえば、両親に対して心の距離を感じていたり、何らかのきっかけで家族の関係性が希薄になってしまったなど。佐伯さんには、こうした問題を結婚式で解消したいという相談も寄せられます。