花嫁の憧れドレスブランド 「KIYOKO HATA」の世界
挙式は上品&清楚、お色直しは「カワイイ!コール」
フラワーモチーフのロマンティックなドレスや透明感のある世界観で多くの花嫁を魅了しているドレスブランド「KIYOKO HATA」。公式インスタグラムのフォロワーは4万4000人に上り、海外のブロガーにも紹介されるなど、注目度の高いブランドです。デザインを手掛けるのはどんな人で、どんなポリシーがあるのでしょうか。CORDYマガジンでは、デザイナーの秦清子さんに直接、インタビューし、花嫁へのアドバイスやモノづくりへの熱いパッションもお伺いしました。
ウエディングドレスは万人に愛される上品さを追求
ー秦さんはウエディングドレスとお色直しのカラードレスは、 “役割”が違うと考えていらっしゃるそうです。それぞれに、どのような“役割”を持たせ、デザインにおいてはどのような工夫をしていますか?
秦
ウエディングドレスは、セレモニーの装いなので5歳~100歳まで誰もが素敵だと思える、普遍的な美しさを意識しています。
チャペルの扉が開いた瞬間に全てのゲストが清らかな祝福の心で満たされるような美しいたたずまいを実現したいと思っています。そのためには、どんな光も柔らかく受けとめる、上質なレースやチュールを惜しげもなく使ったデザインを心掛けています。見る人に「良識のある感じの良いお嫁さん」という印象を与えたいと考えているので、上品さや清楚さ、高級感は欠かせませんね。
普段からおしゃれで周りから一目置かれているような方でも、ウエディングドレスは万人に愛されるデザインの方が好印象を与えられるのではないでしょうか。
花嫁の周りに花が舞っているようなカラードレス
ー秦さんが手掛けるカラードレスはインスタなどでも人気があり、独特な世界観があります。「KIYOKO HATA」のカラードレスのデザインの特徴や意識していることは?
秦
カラードレスのコンセプトは「360°恋するドレス」。具体的には、ゲストから「カワイイ!コール」が上がるポイントを取り入れるように意識しています。少女漫画の世界にたとえると花嫁様の周りで花が舞っているような、周りの空気を変えるほどの力を備えたドレスを心掛けています。
たとえば、スカートの片側にフリルでかたどった大輪のバラの花びらをあしらい、歩くとバラが“ふわん・ふわん”と大きく揺れるなど、動きのあるポイントを取り入れているのは私のカラードレスの特徴かもしれません。ゲストの方も花嫁様の歩く姿には注目しているので、動きに合わせて“余韻”が残るような、360度、どこから見ても美しいシルエットを意識しています。
せっかく着替えるのであれば、全ての花嫁様が、歓声や拍手が起こるほどに褒められてほしい、普通に「かわいい」と言われるだけではもったいないと思うんです。結婚式では思い切り華やかに、全てのゲストの注目を一身に集めていただきたい、そのためにドレスにも強い力が必要です。
着る人自体がお花のように見えるデザイン
-1着ごとにデザインのテーマなどがあるのでしょうか?
秦
お花をベースに考えることが多いですね。バラ、ライラック、スミレ、シャクヤク、あじさいなど、着る人自体がキレイなお花のように見える、そんな姿をイメージしてつくることが多いです。
私自身、お花が好きなので、「ブーケをイメージして」「イングリッシュガーデンのような雰囲気で」というようにアイデアを膨らませていくことは多いです。
イマドキの若い女性の興味関心などを自分自身の肌で実際に体感するというのも大事にしています。意識的に、幅広い年代の雑誌を読んだり、インスタグラムやピンタレストで情報収集をしてみたり、流行のカフェや新しい話題のスポットなど、若い女性が集まるような場所に行ってみたりもします。
ファッションやメイクは時代に左右される要素が多いので、常に最新の情報をインプットするようにしています。でも「若い女性の感覚を持ち続けないと!」といった義務感ではなく、単純に興味があるので自然と行動している感じです。10代向けのキラキラしたファッション雑誌なんかを読んでいると、いまだにワクワクしますね(笑)
胸のラインやトレーンの長さを工夫しスタイル良く
ー最近はインポートドレスも人気が高いですが、日本人と欧米人の体型の違いから、着る人を選ぶドレスも多いです。日本人花嫁のためのドレスデザイナーとして工夫していることは?
秦
日本人と欧米人では、全体のバランスが異なるので、小顔に見せるために、特に、ウエストラインの高さと上半身のバランスは意識しています。いかにスタイル良く見せるか、立った時の存在感とオーラをクリエイトする工夫も重要ですね。
たとえば、胸のラインを下げて首を長く見せるというのは小顔効果や、ウエストの位置を高く見せる効果を期待できます。ただ、日本の場合は結婚式でお辞儀をするシーンもあるため、あまり下げすぎると「胸が見えるかもしれない」と不安を与えてしまうので、バランスを考えながらデザインしています。
スカートがダイナミックに動くデザインは、ウエストを細く見せる効果もあります。また、私がデザインするカラードレスのトレーンは、若干長めだったりしますが、そうすることで、頭身を多く、スタイル良く見せる効果もあります。
ー最近は「中座するのはゲストに対して失礼」といった理由から、ウエディングドレス1着で過ごす方が洗練されているといった風潮も広まっていますが、秦さんはせっかくならお色直しもした方が良いとお考えだそうですね。
秦
私は、新婦様にとっても、ゲストにとっても、お色直しはした方が良いと思っています。お色直しをした方が変化があり、もう一盛り上がりできてゲストも楽しい、もちろん、新婦様ご本人も楽しめるはずだと思うからです。
だからこそ、ウエディングドレスとカラードレスは、それぞれに異なる空気感をまとうようにデザインしています。ウエディングドレスは上品で清楚に、カラードレスでは「わー!かわいい!」という歓声が上がり、その場の雰囲気がガラッと変わるような流れを、強く意識していますね。
アパレルブランドのチーフデザイナーを任された経験も
ーアパレルブランドのデザイナーだった時代もあるとのことです。ウエディングドレスデザイナーになるまでのいきさつを教えてください。
秦
最初に師事したのは、日本のファッション界をリードされてきた吉田ヒロミ先生です。吉田先生は、パリのハイブランド「ジバンシー」でアトリエチーフのアシスタントである「セコンド」を務められ、アメリカのファッション誌「ハーパース・バザー」のスタイリストにも抜擢された方です。私は吉田先生の立ち上げられたブランド「CLOVE vs CLOVES/クローブ クローブス」でチーフデザイナーを任せていただきました。
その後、婚礼衣裳メーカーのクラウディア様と出会い、ドレスデザイナーとしてのキャリアがスタートさせました。もう20年以上になりますね。
ウエディングドレスには周りを幸せにする力も必要
ーアパレルとウエディングドレスで、デザインのやり方など違いはありますか?
秦
服飾デザインと言っても、ウエディングドレスとアパレルではモノづくりの視点が全く違います。ウエディングドレスは、周りの人に喜んでいただくなど本人以外の要素も大きなウエイトを占めます。それは絶対に忘れてはならない視点だと思います。
アパレルのデザイナーだった時には、私自身がカッコイイと思うものに「こんな風に着こなしてください」というメッセージを込めて作っていましたが、ウエディングドレスには「親孝行」「ゲストに喜んでいただく」など、本人以外の視線が入ってきます。花嫁様だけでなく周りの人にも喜んでいただいてこそ、本当の意味で満足につながると思っているので、常に「本当にこのドレスが人を幸せにするだろうか」「これを着る人が幸せな1日を過ごしていただけるだろうか」と、幅広い視点からデザインを考えるようになりました。同じ服飾デザインでも全然違う、異なる技量が試されるのがつくっていても面白いし、奥が深いですね。
ドレスと一緒に花嫁の大切な思い出もつくっている
デザイン画を基に仕上がってきたドレスをチェックする時には、モデルさんに何往復も歩いてもらって、様々な角度から、フリルがどんな風に揺れるのか、近くで見たり、遠目に見たりして、細かく確認し、誰の目にも美しく見える姿を追求しています。写真映りも大事なので、写真を撮って色合いをチェックしたりもしますね。
たとえば「まるで花を着ているかのようなスカート」といった発想からデザイン画をスタートしても、仕上がってみると「フリルが馴染んでいない」「バランスが悪い」など、理想通りにならなかったりします。デザイン画を描くのと同じぐらい仕上がったドレスを直す時間も重要かもしれません。
最初のアイデア通りになるかどうかは、フリルの幅や生地の硬さなどで大きく変わるので、ドレスの前をウロウロしながら「あそこのフリルのカーブが2㎜違う」など細かく調整しますし、そのドレスのことが夢に出てきたりしますね。
結婚式は人生の中でも特別な1日。その中で身に着けるウエディングドレスは、花嫁様の思い出に深く残る大切なもの。その大切な責任を負っているという気持ちが強いので、常にドレスのことが頭から離れないのだと思います。
でも、ドレスと一緒にみなさんの大切な思い出もつくっていると思うと、こんなに幸せな仕事は他にないな、私自身も幸せだなと思いますね。
「KIYOKO HATA」デザイナー 秦清子
20代で東京コレクションブランドのチーフデザイナーとして活躍。ファッション誌にて、期待される新人デザイナー8人に選ばれる。ミラノ在住中に、フリーランスのデザイナーとして主にモード誌を中心に活動。現在は「360度、恋するドレス。」をコンセプトにしたウエディングドレスのデザイナーとして活動中。
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