ブライダルインナーって必要?主な5種類の機能やドレスに合わせた選び方をプロが解説
2022.09.30 2022.09.30
ドレスショップなどでブライダルインナーの購入を勧められ「普段の下着と何が違うの?」「1回しか着けないものならできるだけ安く済ませたい」などと感じる人もいるのではないでしょうか?
実は、ブライダルインナーにはドレス姿を美しく見せるために体型を整える役割があり、花嫁にとってはマストアイテムなんです。
ここでは、ブライダルインナーの補整機能やどんな種類があるか、体型のコンプレックスやドレスのデザインに応じたブライダルインナーの選び方などについて、インナーメーカーのプロフェッショナルに話を聞きました。
<こんなプロに聞きました>
・ブルームリュクス 営業部 松木麗さん
・セモアブライダル 広報担当 坂本妙子さん
・ラナチュール デザイナー 昆野美津子さん
■ ブライダルインナーと普段の下着の違い
ブライダルインナーと普段の下着の最大の違いは、補整力です。
普段着けているブラジャーの役割は、バストをナチュラルに整えてキープし、加齢による下垂を防ぐことです。ドレスのように肌の露出の多い服装を想定していないため、ストラップを外すとバストを高い位置で長時間キープすることは期待できません。
また、一般的なブラジャーの丈はみぞおちのあたりまでなので、ウエスト周りを補整することもできません。
一方、ブライダルインナーは、バストやヒップを高い位置に引き上げてボリュームアップ、ウエストも普段より高めの位置でくびれをつくり、その状態をキープするといったボディメイクの機能が備わっています。金額の相場は上下セット(ガードルやフレアパンツを含む)で2~5万円。
こうした補整機能が必要な理由は、ドレスが欧米人の体型を想定したつくりになっているものが多いためです。
日本人も、バストやヒップの位置を高くして、凹凸のはっきりした欧米人のような体型に近づけた方がドレスを美しく着こなすことができます。
そのため「やせ型だから必要ない」というわけではありません。自分のサイズに合ったインナーを選んでドレスの似合うメリハリボディを目指しましょう。
■ 主なブライダルインナー5種類の機能や特徴
では、ブライダルインナーにはどんな種類があるのか、上半身と下半身に分けて解説していきます。
まず、上半身は「ビスチェタイプ」と「セパレートタイプ」の大きく2種類があります。
① 幅広いドレスに合う 万能「ビスチェタイプ」
ビスチェタイプは、バストからウエストまでを一つなぎで整えてくれるインナー。
バストを高い位置でボリュームアップさせ、ウエストのくびれをつくるという基本的な機能を押さえているのはもちろん、背中のホックが腰の位置など低めに設計されていてバックスタイルが大きく空いたドレスにも対応できるなど、合わせられるドレスの幅が広いというのが最大の特徴です。
② 高補整力&ぴったりサイズが叶う 「セパレートタイプ(ロングブラジャー&ウエストニッパー) 」
セパレートタイプは、丈が長めのセミロングブラジャーにウエストニッパーを重ねるようにして着用します。アンダー部分を二重に支えることで、理想の位置に整えたバストを長時間キープすることができます。
最大のメリットはバスト・アンダーバスト・ウエスト、それぞれをぴったりサイズで揃えられること。
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セモアブライダル 広報担当 坂本妙子さん 「一般的なビスチェタイプが対応しているのは、バストサイズA~Eカップ、アンダーバスト75程度まで。そのため、13号サイズ以上の花嫁さまは、アンダーバストのサイズが合わずに背中のお肉が下着からあふれてしまうことも・・・ また、バストはFカップ以上だけど全体的にはやせ型という方はウエストやアンダーバストがブカブカになったりします。そうしたお客様にはセパレートタイプをおすすめしています」
ただし、ブラジャーとウエストニッパーがみぞおち辺りで重なるので、ごく薄いレースや装飾のないプレーンなデザインのドレスだとひびいてしまったり、ビスチェタイプよりも深めに設計されているために、背中や胸が大きく空いたインポートドレスだと、インナーが見えてしまったりすることも・・・ドレスとセットで試着するようにして、不具合がないか確認したうえで購入しましょう。
下半身のインナーは、補整効果のある「ガードル」と通気性をよくする「フレアパンツ(タップパンツ) or ドロワーズ」の大きく2種類に分かれます。
③ 「ガードル」はマーメイド&スレンダーラインドレスならマスト
お腹やお尻のボディメイクをしてくれるガードル。下腹部を平らにして、ヒップの位置を高く立体的に整える機能があり、マーメイドラインやスレンダーラインなど、体のラインがくっきりと出るドレスを選ぶ人にとってはマストアイテムです。
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ブルームリュクス 営業部 松木麗さん 「ガードルには骨盤を支えて姿勢を立てる効果があり、着けると自然に背筋が伸びます。美しい姿勢をキープしてくれる効果があるので、Aラインやプリンセスラインなどスカートのボリュームでお腹やお尻のラインが隠れるドレスを選ぶお客様にもおすすめしています」
④ 通気性をよくする「フレアパンツ(タップパンツ) or ドロワーズ」
フレアパンツやドロワーズの機能は、足さばきを良くしたり、湿度が高くなりがちなドレスの中を快適に整えること。また、当日、花嫁支度を整えてくれるドレスフィッターさんやヘアメイクさんに裸に近い状態を見せない、エチケットの意味合いもあります。
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セモアブライダル 広報担当 坂本妙子さん 「実は、ドレスの中は湿気がこもっていて、ひざや太ももの裏に汗をかいてパニエが肌に張り付いてしまうといった問題が起こったりします。フレアパンツやドロワーズは、速乾性や通気性に優れた生地が使われていることも多いので、不快感を和らげてくれます。フレアパンツよりもドロワーズの方が丈が長いので、より汗や湿気から守ってくれる機能も高いです」
⑤ 優雅な気分に浸れる「ガーターベルト」
ガーターベルトはひざ上までのストッキングがずり落ちないように止めるアイテム。中世のヨーロッパ貴族が登場する映画などに出てくるような優雅なデザインが持ち味です。
補整機能はありませんが、特別な1日は見えない部分までおしゃれを楽しみたいという人にぴったりです。
なかには、背中や胸の空きが大きすぎて、どのタイプのインナーも着られないというドレスもあります。
その場合は、着けられるのはヌーブラやニプレスなどのみ。インナーによるボディメイクができないため、トレーニングなどで自信の持てる体型を目指しましょう。
■ マタニティインナー お腹に負担をかけず体型を整える
マタニティインナーの役割は、第一にお腹周りに負担をかけないこと、そのうえで体型を整えることです。
一般的なブライダルインナーには、シェイプアップのための「ボーン」と呼ばれる柔らかいワイヤーが入っていますが、マタニティーインナーにはありません。
脇やお腹の両脇が編み上げになっていてお腹の膨らみに合わせて調節できるようになっています。
妊娠中のバストは横に広がり、その重みで下垂しがち。ブラジャーは左右の区別がないフリーカップでバストを中央に寄せてコンパクトに整えるというタイプもあります。
マタニティ専用のウェディングドレスを手掛ける「ラナチュール」では、1000人以上のマタニティブライズの体型変化を研究、オリジナルのマタニティインナーを開発しています。
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ラナチュール デザイナー 昆野美津子さん 「当社のマタニティインナーは、オールインワンタイプ。アンダーバストから下はストレッチ素材を使用し、お腹全体を優しく包み込むことで、極力、体に負担がかからないような設計を目指しました。
普段、妊婦さんはウエストを締め付けないふわっとしたワンピースなどを着ていることが多いと思いますが、その理由はお腹にゴムやボタンなどが当たるのが不快だから。ブライダルインナーは妊婦さんのお腹が一番大きくなるおへその辺りで切れているものが多く、負担がかかるのではないかと考え、オールインワンタイプに辿り着きました。
妊娠中のヒップの変化も考慮し、立体裁断でパターンを設計、体に負担をかけないだけでなく、女性らしいウエストやヒップラインも叶うインナーをご用意できたのではないかと思います」
■ 目的に応じて購入するタイミングを考えよう
ブライダルインナーを購入するタイミングは、目的に応じて大きく2つあります。
1つは結婚式の1週間~10日前頃に行うドレスの最終フィッティングのタイミング。結婚式のギリギリまでダイエットしたい人におすすめです。
ドレスの最終フィッティングはダイエットの“締め切り”でもあります。最終フィッティング後は、当日ドレスをぴったりな状態で着るためにも体型をキープする必要があるためです。そのため、「ギリギリまでダイエットを頑張りたい!」と考えている人は、最終フィッティングまで待ってインナーを購入することをおすすめします。
もう1つは、結婚式の1ヵ月前頃に行う、ドレスに合わせる小物選びのタイミング。インナーを早めに入手することで、式当日までのボディメイクに使うことができます。
ブルームリュクスの松木さんは、ドレスのインナーとしてだけでなく、普段から着けることで理想的な体型に近づける効果もあると教えてくれました。
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ブルームリュクス 松木麗さん 「たとえば、脇の「はみ肉」。実は、普段着けている下着が体に合っていないことが大きな原因のひとつなんです。アンダーバストがゆるい、カップが小さい、ストラップが長すぎるといった理由で、本来ならカップに収まるべきお肉が横に流れてしまい「はみ肉」になってしまいます。ブライダルインナーはこうした「はみ肉」がカップの中に収まるよう、“クセ”を付けることができ、インナーで整えた体型を長時間キープしやすくなるという効果も期待できます」
■ ドレスショップや下着メーカーなど様々な購入場所とそれぞれのメリット・デメリット
ブライダルインナーを購入できる場所は大きく以下の4つ。
・ドレスショップ
・ブライダルインナー専門店
・百貨店
・ネットショッピング
では、それぞれの購入場所によるメリット・デメリット、どんな人に選ばれているかなどを解説していきます。
① ドレスショップ
ドレスショップで購入するメリットは、ドレスとセットで試着できること。胸元や背中が大きく空いているドレスなどはインナーが見えてしまったり、繊細な生地だとインナーが透けてしまうこともありますが、セットで試着すればきちんと確認したうえでミスなく購入できます。
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セモアブライダル 広報担当 坂本妙子さん 「たとえば、ドレスの重みでインナーが下にズレてきたり、ドレスのデザインによってはインナーが体に当たって着心地が悪いといったケースもあります。でもドレスと一緒に試着すれば、別のインナーを試したりサイズを変えてみたりと、ちょうどよいバランスに調整することができます。8割方の花嫁さまがドレスショップで購入されているという感覚がありますが、理にかなっていると思います」
② ブライダルインナーの専門店・百貨店
ブライダルインナーの専門店や百貨店の下着売り場には、ドレスショップでの試着で「サイズが合っていない気がする・・・」など違和感を覚えた人が訪れているようです。
理由は大きく2つあります。
1つはドレスコーディネーターの見立てたサイズが誤っていたり、正しく着けられなかったというケース。一般的に、ドレスコーディネーターはブライダルインナーの役割や着け方などを学んでいますが、経験の浅いコーディネーターは、慣れておらずうまくいかないこともあります。
もう1つは、サイズは合っていても着慣れないために違和感を覚えてしまうケース。
なかには、下着のサイズは何年も前に測ったきり、それが自分のサイズだと思い込んでいる人も。その場合、本人が思っているのと違うサイズを提案されると、普段と着け心地が違うために「合っていない」と感じることもあります。
また、普段、カップ付きキャミソールやノンワイヤーブラジャーなどに慣れている人は、窮屈に感じがちです。
ドレスショップでの試着で違和感を覚えたら、まずはインナーメーカーに問い合わせると、下着のプロによるベストな回答を期待できます。
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ブルームリュクス 営業部 松木麗さん 「下着のプロはその人の“肉質”など、細かい部分まで配慮したうえでジャストサイズを提案できます。たとえば、筋肉が少なく柔らかい肉質の人はインナーで引き締めることでサイズダウンしやすかったりします。でも、締めすぎると『はみ肉』が出やすいという側面もあるので、一番細見えするサイズを見極めます。こうした知識やご提案がプロにご相談いただくメリットだと思います」
③ ネットショッピング
Googleで「ブライダルインナー」と検索すると、「楽天市場」などのショッピングサイトも表示され、1万円以下など安く購入できるものもたくさんあります。
注意したいのはサイズ。できれば試着したうえで購入することをおすすめします。普段の下着のサイズに合わせても、ぴったり着られるとは限りません。同じサイズでもメーカーによって微妙にサイズが違ったり、生地の伸縮性や素材などによってもフィット感が変わってきます。
ネットショッピングでも「交換無料」などと謳っている商品もあるので、可能ならドレスショップに持参してコーディネーターに着けてもらい、ドレスとのバランスも確認したうえで購入するのが理想です。
■ メルカリや卒花からの「お譲り」をおすすめできない理由
「メルカリ」などのフリマアプリで購入したり、Instagramでつながった卒花嫁からの「お譲り」でインナーを用意する人もいます。最大のメリットは価格の安さ。有名メーカーのものでも、2000円~1万円程度で購入できます。
ただし、中古品は補整機能が薄れていたり、衛生上の問題などから、CORDY編集部としてはおすすめできません。
最大の問題は補整機能が薄れていること。
メルカリを見ると「ホームクリーニング済み」などと書かれている商品もありますが、洗濯ネットに入れて洗濯機で洗ってある可能性もあり、この場合、ブラジャーのカップは崩れ、ウエスト周りを補整する「パワーネット」も伸びきっていたりして、本来の補整効果は期待できません。
持ち主の保管状況によってはさらにダメージを受けている可能性も・・・たとえば、タンスの奥に眠っていたインナーは、上に乗せていた衣類の重みでブラジャーのカップがつぶれています。
また、数時間とはいえ、一旦着用したインナーはその人の体型の“クセ”がついてしまうため、新たに別の人が着てもなかなかフィットしないという問題もあります。2人目、3人目など何度も転売されている可能性もあり、その場合は余計に自分の体に馴染んでくれません。
このように、中古のブライダルインナーは、体型補整という本来の効果を発揮できず本末転倒になるというのが、おすすめできない理由です。
■ 「1回きりでもったいない」は間違い 結婚式後も活用するために
「1回しか着ないなんてもったいない」といった声もありますが、実はブライダルインナーはウェディングドレス限定のものではなく、「お呼ばれドレス」のインナーや、ボディメイクのためにも活躍します。
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ブルームリュクス 営業部 松木麗さん 「もしかしたら、『ブライダルインナー』という名称が『普段使いはしないもの』という誤解を招いているのかもしれませんね。ブライダルインナーは、ウェディングドレスに限らず全てのドレス姿をスタイルアップさせてくれます。実際、ステージドレスのインナーとして購入される演奏家の方もいらっしゃいます。もちろん、出産後の体型戻しにもご利用いただけます。ぜひ、1回きりと言わず普段から活用していただきたいです」
結婚式後も長く活用するために、①自分で着る方法、②適切な保管方法の2点を解説します。
① 自分で着るには?
結婚式当日は着付けのプロに着せてもらえますが、自分で着られなければ結婚式後に活用することはできません。
ブルームリュクスの松木さんが1人で着る方法について、以下のように教えてくれました。
step1
サテン生地などすべりの良いスカートなどをはき、そのうえからインナーの背中側を前にしてホックを止めていく
step2
インナーを腰から半分に折り、スカートなどのすべりを利用してインナーを180度回し、ブラジャー側を前に持ってくる
step3
正しい位置まで引き上げ、日頃ブラジャーを着ける要領でバストメイクすればできあがり
② ブライダルインナーの正しい保管方法
ブライダルインナーを誤った方法で保管すると型崩れしてしまい、せっかくの補整機能が失われてしまいます。ここでは正しく保管するための洗濯方法と収納方法についてご紹介します。
洗濯は手洗いをおすすめします。ぬるま湯におしゃれ着用洗剤などを溶かし、インナーを浸します。押し洗い or ふり洗いをした後、よくすすぎタオルなどにくるんで水気を取ります。
干し方は陰干し。インナーの形を整え、ブラジャーカップの両端を洗濯ばさみで止めるか、ブラジャーカップの中心から縦に二つ折りしハンガーにかけるなどして乾かします。
収納する際は、ブライダルインナーの上に他の衣類を乗せないようにしましょう。カップやボーンの型崩れを防ぐために、折ったり畳んだりせずそのままの状態で収納すると長持ちします。
■ まとめ
せっかく運命を感じたドレスに出合えたら、キレイに着こなしたいですよね。そのための土台となるのは自分自身の体。
ブライダルインナーの補整機能を活用して、ドレスに合う体型に整えたうえでウェディングドレスをまとえば、理想の花嫁姿に近づけるのではないでしょうか。
教えてくれた人
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ブルームリュクス 営業部松木麗さん
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セモアブライダル 広報担当坂本妙子さん
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ラナチュール デザイナー昆野美津子さん
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「一般的なドレスのバストはCカップ相当のサイズでつくられていることが多いため、できるだけそのサイズに整えた方が美しく着こなせます。インナーを着用すれば、A~Bカップの場合はパッドを入れてボリュームを調整したり、ふくよかな方はボディサイズやバストのボリュームをコントロールするタイプのインナーを選ぶことで、ドレスに合った黄金バランスへと体型を整えることができます」